ボサ髪ダサ男に犯されて

・作

アニオタ女子の莉子は予約していた新刊を受け取りに行きつけの本屋へと向かった。ボサボサ頭で目元が全く見えない、いつもの店員に声を掛けたところまではいいが…。気付けば莉子は彼に捕らえられて両手が拘束された状態に。必死に抵抗するも身体は正直で徐々に気持ちよくなり…。

「やだっ…!やめてっ、お願いだからやめてください…っ」

「本当にやめてもいいの?ここ…凄いことになってるけど?」

「…っ!!」

「身体は素直みたいだね。それじゃあ…もう遠慮はいらないかな」

遠慮してたの…!?
今の今まで、散々好き勝手に人の身体を触ってきたくせに…。

「僕を睨んだってダメだよ。そんな顔も愛おしくてたまらなくなるだけだから」

私の目線から考えていることを読み取ったのだろう。覆いかぶさる大きな影が嬉しそうに震えた。

「…この変態っ!」

「どーも」

その瞬間、私の中深くに熱くなったそれを突き刺し、何度も何度も強く打ち付ける。

「えっ…あっ、やだっ!やだぁ…あぁ…んっんっ」

嫌でたまらないはずなのに、ゾクゾクとした感覚が背中を駆け抜け、全身が粟立つ。

それでも好きでもない人に抱かれるのは絶対に嫌だ…。

私はがっちりと掴まれた腰に置かれた手を振りほどこうと、彼の手を出来るだけ強く引っ張った。
でも、男の人の力に敵うはずもなく、あっけなく手を振りほどかれる。

「声が枯れるまで啼かせてあげるよ」

行き場のなくなった私の手に自分の指を絡ませ、椅子に縫い留める彼…。

私を見つめる目は狂気に満ちていて、まるで獲物を見つけた猛獣のようで怖い。

――怖いはずなのに…。

どうしてか蠱惑的に見えるのはなぜだろう。

*****

「ねぇねぇ莉子、今日、新刊の発売日って知ってる?」

「もちろん!どれだけこの日を待っていたことか…!」

「あははっ、さすがオタク!って私も負けじとオタクですが」

私、七瀬莉子は保険会社に勤める24歳。
そして、何を隠そう生粋のオタクなのだ。

おはようからおやすみまで推しを眺める生活をしている私は、本日も仕事帰りにお目当ての漫画を買うため、せっせと退社準備をしている。
たとえもし今、部長から仕事を頼まれたとしても、完全に無視する予定…っていうのは内緒。

だって、早くしないと特典付きが無くなっちゃうんだもん!

私が狙っている漫画は、最近アニメ化されて一気に漫画の方も人気が出た作品で、今朝なんて朝のテレビで新刊発売が大々的に取り上げられていたほど。
昔から作品のファンだったこともあって、ここまで人気が出て嬉しい反面、遠い場所にいってしまったようなもの悲しさも感じる。

だけど、ファンとして推していた作品が世に出回るのはやっぱり嬉しいものだ。

「それじゃ、お先に!!」

「買ったら報告よろしく!」

机の上に出ていた携帯やタンブラー、ペンケースなどをドタバタと詰め込んだ私は、同期でオタク仲間の愛ちゃんに合図すると、やや駆け足でお気に入りの本屋さんへと向かった。

駅前には大きな本屋さんがあるんだけど、行きつけの本屋さんは駅とは正反対の場所にあって、会社から徒歩15分ほど。

こじんまりとしたその本屋さんは、外観だけでなく店内もシンプルな造りで、必要なものしか置かれていない感じ。
低めの雑誌棚が入り口付近に置かれ、奥の方にはずらりと背丈の高い本棚が並んでいる。

本屋さんの独特の匂いが大好きな私は、店内に入るなり深呼吸した後、真っ先にレジへと向かった。

「すみません、この漫画が今日発売されていると思うのですが…入荷してますか?」

商品画像を店員さんに見せながら、自分の鼓動が早くなるのを感じる。

だって、今回の特典はオリジナル描き下ろしが付いているんだもん!
ワクワクし過ぎて、ドキドキが止まらない…!

「あぁ…。少々お待ちください」

ボサボサとした髪のせいで目がほとんど見えない男性店員さんは小さな声でそう言うと、そのまま裏の倉庫へと入っていった。

あの人、いつ見てもあの頭だよね。あれで接客とか問題ないのかな?
服装もいくら店用のエプロンがあるからといえ、いつ来ても同じようなTシャツにデニム。

接客するんだからもう少し、清潔感を出した方がいいような気もするんだけどなぁ。
前髪で目を覆っちゃてるから、今まで一度もちゃんと顔だって見たことがないし。

だからといって、店員さんに興味はない。ただ、冬眠から目覚めたてのような獣みたいに見えて不快なだけ。

それにしても、まだ見つからないの?

少しイライラしてきた私は腕時計で時間を確認した。
20時30分になっている。

本屋に入ったのが20時20分くらいで、店員さんと話して…。
彼が取り置きの棚を見てくると言ってから、10分近く経とうとしている。

さすがに待たせすぎでしょ…。

そう思った私は、レジ横に置かれている呼び鈴を指で弾いた。

他の店員さんがやって来ると思っていたんだけど、まさかの先ほどのボサボサ頭店員が再登場。

「あの、まだ見つかりませんか?もう10分近く待ってるんですけど…」

「すみません。確かに入荷してるんですが…えぇっと、なぜか見当たらないんです…申し訳ございません」

どうしよう…。本当は発売日の今日読みたかったんだけど、この調子じゃまだまだ時間がかかりそうな感じ。
日を改めて出直そうかな…。

でもでも!この日のために仕事を頑張ってきたんだから、もう少し粘るべき…。

「あ、そうでした。すみません、今朝早くに漫画のコーナーに全て出していました」

はぁ?忘れてたってこと?信じられない…けれど、今はこんなことを気にしてる場合じゃない。

急いで帰って、ゆっくり自分時間を満喫したい!!
家の近くにあるコンビニでスイーツとお酒を買って、それからささっとお風呂に入って、ゆったりと漫画を読む!

もう、最高過ぎるでしょ~!

うっかりニヤニヤしてしまった私を、店員さんがじっと見てくる。
…目がどこにあるのか分からないから、見てくるという表現で本当に当たっているかは分からないけれど、なんとなく視線を感じるのは本当だ。

「じゃあ、取ってきますね」

恐らく目があるだろう場所を私が見返したせいか、一瞬ハッとなった店員さんは慌てて漫画コーナーへと走っていった。

そんな彼の後ろから私もついていく。

もし、また探せなかったら困るからね…。

「すみません、ありました。これですよね?」

ちょっと嬉しそうに漫画を両手で持って走ってきた店員さんは、確かめて欲しいと言って私に差し出す。

意外なその姿が、どこか大型犬のように見えて私は心の中で笑ってしまった。

「はい、これで当たってます。ありがとうございます」

よし!特典もちゃんと付いてるし、何も問題はない。あとは早く帰って漫画を堪能するだけだ!

くるっと店員さんに背を向けてレジへと歩き出そうとした時、急に後ろから腕を掴まれ、背中に温かい気配を感じた。

そして…

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