眼鏡を取った彼は別人のように私を抱く

・作

新婚さんの綾と優人は周りも羨むラブラブ夫婦。綾も完璧な旦那さんである優人に不満はないのだが…どうしても解消されない不満があった。それは夜の事情。淡泊な彼のセックスに物足りなさを感じる綾は、親友からアドバイスをもらい実行に移すことにしたのだった。

「綾ちゃん、それじゃあ行ってきます」

「いってらっしゃい、優人くん」

ちゅっと私の唇を軽くついばむようなキスをした後、頭を優しく撫でて出勤する旦那さん。
ドアが閉まるわずかな瞬間、彼の頬がほんのりと赤く染まっているのが見えた。

ふふっ、照れちゃって可愛い!

私と優人くんは結婚して半年の新婚さんで、いわゆる職場恋愛だった。

お互いに銀行員として働いていたが、私の方は優人くんに特別な感情は全くなくて、ほとんど話したこともなかった。

優人くんはスラっとした高身長の、艶やかな黒髪の持ち主で、かなりモテそうに見える。
だけど女性陣の間では、他の人とほとんど会話することなく、黙々と仕事をこなす姿が怖いとの噂があった…。

そんな噂を聞いた後で、彼をチラッと見ると、目がバッチリ合ってしまって慌ててパソコンに向かう。

うん…、確かにあの眼鏡の奥の瞳が鋭くて怖い!

そう私は思っていたんだけれど、実際の彼は違っていたのだ。

ある年の忘年会の時に、彼と席がたまたま隣になり、少しお話をしたんだけど、意外や意外!
色々なことに知識のある優人くんと話していると楽しくて、もっと仲良くなりたいと思ってしまった。

そして、その日に連絡先を交換すると、いつの間にか毎日連絡を取り合うようになり、職場でも一緒に過ごすようになった。

それから、優人くんの私に対する好き好きアピールは凄まじく、周囲も驚くほど。
彼の変わり様に、何故か上司や先輩たちが心を打たれて、私と付き合えるように裏で協力していたことを後で知ることになったんだけどね。

そんなこんなで、職場のみんなに見守られて私と優人くんは交際し、順調に結婚。
子供好きの私は、結婚したらすぐにでも子供が欲しかったことから、結婚を機に退職したのだった。

そう、私は幸せだ。

一途に想い続けてくれて、結婚後も変わらず優しくて、よく働いてくれて、家事も積極的にしてくれる。

何も不満はない。うん、不満は…。

*****

「あるわよ!!不満はある!」

「ちょっと、綾…!ここ居酒屋じゃなくて、カフェだってこと忘れてない!?」

思わず大きな声を出してしまった私に、親友の早紀が軽くおでこをペチンと叩く。

「ごめんって、でも周りから『新婚さんはいいわね~、きっと夜も甘いんでしょ?羨ましいー!』なんて言われるのよ?実際はそうでもないのに…」

「エッチしてないの?」

早紀の問いかけに、私は食べかけのショートケーキを見つめながら考え込む。

うーん、全くしてないわけではない。
なんなら、具合が悪かったり生理以外であれば、毎日のように彼は私を求めてくる。

もちろん、私も優人くんを愛してるから嬉しいんだけど…。

何というか…優人さんのエッチは、ものすごーく、淡泊な感じなのだ。
パターンとしてはキス→軽い愛撫→正常位スタイル→フィニッシュという感じ。

正直な話…物足りなかった。

神妙な面持ちで黙り込んだ私を見た早紀が、それなら!と不敵な笑みを浮かべる。
これは、よからぬことを企んでいる時の顔だ…。

「その様子だと、綾は優人さんに激しく抱かれたいってことね?はいはい、この恋愛マスターに任せなさい!」

自信満々で胸をポンと叩く彼女は、学生の頃からモテていて、オフィスの受付嬢をしている今もナンパが絶えない。
恋愛スキルは私よりも遥かにある。

「こっちからガンガン攻めるのよ!」

綾から攻めて刺激を与えれば、優人さんもイチコロ!激しくあなたを抱くでしょう。
なんて天気予報みたいな口調で、得意げに語る早紀。

言われたみたら、一度も自分から彼を求めたことはなかったし、エッチも彼にリードされている状態。

そこで私は、早紀のアドバイスを元に、優人くんに仕掛けることにしたのだった…。

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