あれ!?夢ですよね? 妙に生々しい夢の世界で選びの巫女と間違われ処女を奪われそうです!
目覚めると、知らない土地に座っていた。手を差し伸べてくれた彼、推しキャラ・アンリ様の登場により、夢であると悟る。暗殺者と間違われ、城まで連行されるが、今度は1000人の王子の中から1人の王を選ぶ、選びの巫女と勘違いされ、貞操を狙われる羽目に。
目が覚めるとそこは、異世界だった。
荷馬車がガタゴトと目の前を横切る。
わたしは呆然として、地面にへたり込んだまま、空を見上げた。
見たところ、ここは城下町で市場のようである。
おかしい……わたしは頭を抱えて、泣きたい気持ちでいっぱいだった。
さっきまでわたしは、仕事を終え、自宅でゲームをしていたはずなのに……。
「お嬢さん、そんなとこにへたり込んでどうしました?」
紳士的に手を差し伸べてくれた彼を見て、わたしは、あっと声を出した。
「アンリ、様?」
わたしのハマっているゲームの推しキャラだ。
ということは、ここはもしや夢の中?
乙女ゲーム『選びの巫女と1000人の王子』の世界の夢を見ているのだろうか?
なんてリアルな夢だろう。
いや、夢だろうがなんだろうが、この際構わないと、推しの顔面のよさにただただ見惚れるわたし。
24年生きてきてまったく男っ気のなかったわたしにとって唯一の癒しだ。顔がいい。
すると、アンリ様はわたしの手をグイと引き、路地へと連れ込んだ。
「下町に私の顔は広まってないはずだ。私を知っているとは、おまえ何者だ?」
鼻先が付くほど顔を近づけられ、わたしは赤面しながらおどおどと言葉を詰まらせる。
「…私の顔と名を知っているのなら、このまま帰すわけにはいかない。悪いが城まで来てもらうぞ」
そういうと、アンリ様はわたしの手を引いたまま、歩き始めた。
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決死の訴えが届き、アンリ様の命を狙う者ではないことだけは信じてもらえた。
「悪いが身元がわかるまでは城にいてもらう」
調べてもわからないだろうけど、などとは口にしない。これは夢、なら楽しんだもの勝ちだろう。
わたしは跪いてうなずく。
アンリ様はわたしの格好をチラッと見ると、侍女を1人呼んだ。
「はだしで歩かせた私のせいだが、ずいぶん泥だらけだ。湯を用意させる。休んでくるといい」
それからアンリ様は困ったように眉を下げ、わたしに謝った。
「できるだけ早く調べさせるが、しばらくは城に拘束されることになる。すまない。立場上多くの者から命を狙われているのだ」
存じ上げていますとも。
第399王子のアンリ様はその美貌ゆえ、多くの刺客に命を狙われているという設定である。
「大丈夫です。お気遣いいただきありがとうございます。ありがたく足を洗わせていただきます」
「うん。私の住むヒスイ宮はそんなに大きな湯殿ではないが、ゆっくりしてくるといい」
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