異世界に転生したらエルフの王子様に恋した件

・作

美優は交通事故にあい異世界に転生してしまった。人間だけではなく様々な種族が暮らす異世界。出会ったエルフの王子、クレシアスに一目惚れしてしまった美優。優しくそして美しいクレシアスに愛され、毎晩愛を注がれる日々がはじまっちゃいました。

キィーッという大きなブレーキ音がして。

「危ないっ!」

と誰かが大きな声で叫んだ。

振り向くと、私に向かって走ってくるトラックがスローモーションのように見えた。
ドンッという大きな音と共に私の身体が宙に舞う。

(あっ、これダメなやつ…)

意識はやがて乳白色のもやに包まれていった。

*****

目を覚ますと、見たこともない森の中。

「あれ、痛くない…?」

確かにトラックにぶつかった筈なのに。
どこもけがをした様子はなかった。

不思議に思いながら上体を起こすと、爽やかな風が吹いて木々が揺れた。
ザワザワと葉擦れの音がする。

「君は…?」

背後から急に声を掛けられ驚いて振り向くと、息をするのを忘れるほど整った顔の男が立っていた。
髪と同じ色の銀色のティアラに見慣れない服、そして深い緑のマント。
瑠璃色の瞳に尖った耳。

(尖った…耳??)

「あなたは…?」

声が震える。

ここは何処だろう。
少なくとも、日本ではないようだ。

「失礼。私はユグド王の子クレシアス」

「クレシアス…」

「そう。この果てなき森に住まうエルフです」

「エルフ…!」

驚いて大きな声を出してしまった。
だって、エルフって。
エルフが居るってどういうこと?

「エルフに会うのは初めてかな?」

「えぇ…」

「初めまして、人間のお嬢さん」

クレシアスが微笑んだ。

(破壊力ありすぎ…!)

「はっ、初めまして。美優です…」

クレシアスは優しく私を気遣いながら話を聞いてくれた。
交通事故にあったこと、目が覚めたら森にいたこと。
たどたどしい私の言葉に、一つひとつうなずきながら。

そして私の話が終わると。

「美優、貴女はどうやらこの世界に迷い込んでしまったようですね。一人では心細いでしょう。私のところに来ませんか」

と声を掛けてくれた。
優しさを浮かべた瞳が私をじっと見つめる。

「良いんですか…?」

「久しぶりのお客様です。歓迎いたします」

クレシアスの言葉に、涙が滲んだ。

*****

クレシアスの家は、大樹に護られた城だった。

私はクレシアスに促されるままにお父様であるユグド王に謁見をし、長老会議に出席をし、そしてこの世界の理(ことわり)に触れた。
エルフと人間の交流はほんの一握り。

山に住まうドワーフと獰猛なオークは敵同士。
そして自然を愛するホビットは静かに暮らしている。

長老会議の結果、「果てなき森が受け入れた」ということで、私は客人としてエルフの城に滞在することに決まった。

(ファンタジーの世界なんだ…)

小さい頃から読みふけった小説の世界がここにある。
私の胸は高鳴った。

食事が終わってクレシアスと廊下を歩いていたら。
大きな窓から、真っ赤に輝く月が見えた。

空も、木も、月もあるのに、同じじゃない。
世界のつながりが感じられなくて、急に心細くなる。

ふと見ると、クレシアスの長い髪が月明かりに照らされていた。

「綺麗…」

「美優」

優しい声。

「クレシアス…」

「今日は色んなことがあったから疲れたでしょう。温かいお茶を淹れるので、一緒にいかがですか?」

私は大きくうなずき、クレシアスの部屋で美味しいハーブティーを飲んでから自室に戻った。

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