優しいオネェは甘くてエッチで絶倫 (Page 2)

「ナツさん!」

あの日以来私はすっかりナツさんに懐いてしまい、頻繁に連絡し過ぎてたまに露骨に鬱陶しがられる。

だけど面倒見がよくて優しくて、結局私に構ってくれるナツさんが私は大好きだ。

ズバッと言われてグサッと深傷を負うこともしばしばだけどね。

「あんたのお尻に尻尾が見えるわ」

「え!」

そう言われて思わずお尻を押さえると、ナツさんはおかしそうに笑う。

「ホントあんたって素直よね」

「子供だってバカにしてるでしょう」

二十八って言うと大概の人に驚かれるし、色気なんて皆無。隣のナツさんの方がよっぽど色っぽい。

目を見つめてたらボーッと見惚れちゃって、吸い込まれそうになっちゃうこともよくあるし。

「可愛いって意味よ」

「ホントですか!?私可愛いですか!?」

「何よ、そう思われたい相手でもいるの?」

「もちろんナツさんですよ!」

食い気味に答えた私にナツさんは呆れたように笑って、私の頬っぺたに綺麗な手をペタリと当てる。

「明日花、やっぱりアンタ可愛いわよ。そういうところもね」

長くてスラッとしてるけど、やっぱり私よりもずっと大きくて少し骨張った手の平。ドックンドックン跳ねる心臓の音に、必死で気付かないフリをした。

ナツさんは、基本的にスキンシップが多い。職業がメイクアップアーティストっていうのもあるだろうし、ジェンダーレスなナツさんには男女問わずお友達がたくさんいて。

私と二人で飲んでる時にナツさんの知り合いがナツさんに声をかけてくるっていうこともよくあって、それが女の人だったらなんとも思わないのに男の人だったらモヤモヤしちゃう…っていう自分の心理がなんとも不思議。

だってナツさんの恋愛対象はきっと、男の人だ。私なんか眼中にないから、なんの躊躇もなくぺたぺた触れちゃうんだろうし。

ナツさんに触れられるのは嬉しいけど、その度に少しだけ切なくなった。

「お、ナツじゃん」

今日も今日とて、ナツさんの知り合いが声をかけてきた。しかも、ホストみたいな風貌のチャラそうなイケメン。

「あら、偶然」

「最近集まりに顔見せねぇな」

「まぁね、忙しいのよ」

「俺お前に会うために行ってんだからさ。ナツいないと意味ねぇよ」

「…」

このイケメンさんには、ナツさんしか見えてないのかな。私が隣にいるんだから、気遣ってさっさとどっかに行ってほしい。

「あら、嬉しいこと言ってくれるのね」

綺麗な黒髪を耳にかけながら、ナツさんはフフッと色っぽく笑った。

「ナツ」

不意にその人がナツさんの頬にキスをする。

「ちょっと何すんのよ」

「いいだろこのくらい。最近ナツ不足だからちょっとちょーだい」

「バカなこと言ってんじゃないわよ。この子がビックリしてるでしょう」

ナツさんが私を見て、その人も今初めて気付いたような顔をした。

「私たち今日はゆっくり飲みたい気分だから。またね」

「次はこいよ」

「気が向いたらね」

ナツさんはそう言って、シッシッと払うような動作をする。その人も諦めたように笑ってようやくどこかへ行った。

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