妹の婚約者は私の元彼
妹の夏海が婚約した。親族顔合わせに来た婚約者は、なんと私の高校時代の元彼だった。私の初めての彼氏で、初めての人…。思わぬ再会に2人は盛り上がってしまい、遂には一線を超えてしまう。妹よ、どうか気付かないで…。
『もしもしお姉ちゃん?私ね、結婚することになったの!』
『そうなの!?おめでとう!!』
実家を出てしばらく経つ。
妹から電話だなんて珍しいと思ったら、そういうことね。
姉としては、先を越されて複雑だが、おめでたいことには変わりない。
『でね、今度顔合わせをしたいからこっち戻ってこれるかなぁ…?』
『大丈夫!調整して必ず行くよ!』
『わーい!お姉ちゃんありがとう』
楽しみにしてるね!と言って電話を切った。
電話口の妹はとても幸せそう。
数日後。
私は地元へ帰り、家族と共に小料理屋で妹の婚約者家族を待っていた。
「遅くなって申し訳ありません」
相手方のご両親、そして妹の婚約者が入室した。
改まって座り直し、顔を上げてよく見ると。
そこにいたのは私の元彼だった。
彼も私に気付き、一瞬驚いたように見えたが、その後は平静を装って知らん顔。
もちろん私も。
それが、今私たちが取るべき正しい行動だったはず。
*****
妹の婚約者…私の元彼は、高校生の時に初めてできた彼氏だった。
何をするにも初めての私に、彼がすべてを教えてくれたのだった。
自宅アパートへ戻ってからも、しばしば高校時代を思い出しては感傷に浸っていた。
あの、キスをする前に見せる真剣な眼差し。
快楽に溺れて歪む、苦悶の表情。
その顔を妹も知っているのかと思うと、なんだか変な気分になる。
私も、何人かの人とお付き合いをしてきたというのに。
何人かに、抱かれたというのに。
彼が他の女を抱いていたのかと思ったら、なんだかモヤモヤした気持ちになった。
別れたのだって、もう10年も前の話なのに。
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