特別実習にいたしましょう (Page 2)

先生はテラスで寛いでいた。

「先生、お待たせしました」

チェアから腰を浮かし、先生が近寄る。

「とてもよく似合ってますよ、佐伯さん」

「本当ですか?ふふ、嬉しいです」

褒められるとやはり嬉しい。とはいえ、格好が格好なので照れもある。頬が熱い。

「庭で撮りましょう。百合の花が綺麗に咲いていますから。これ、被って。麦わら帽子」

帽子を被せて、手を引いてくれる。

テラスを通って庭に出る。よく手入れされた庭園は西洋風で、百合が咲き乱れている。夏の日差しが花びらの上でキラキラと反射する。

「いいね、綺麗だ」

わたしを百合畑の前に立たせ、先生がカメラを構える。

「そんなに下がらなくていいよ。うん、そこで。肌が草で負けたら大変ですから」

指示に従いポーズを取って、先生がシャッターを押す。

カメラに向かう先生は、真剣で情熱的で、とてもかっこいい。

いつもは穏やかで優しい目をしている先生だが、このときだけは、まるで別人のように眼光が鋭くなる。

獲物を狙うかのような、獰猛とも言える視線。

わたしのことなど被写体としてしか見ていないことはわかっているが、胸の底にヒリつく思いが芽生える。

レンズ越しに食べられてしまいそうだ。

薄着のせいもあるかもしれない。

「佐伯さん、このベンチに座って。少しローアングルから撮ります」

「はい」

先生が近い。この心臓の音が聞こえませんように。

カメラが構えられる。 

「ん?」

そう呟くと、先生は覗いていたファインダーから顔をずらした。

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