慰めをご所望ですか?お客様。 (Page 2)

「で、どうしたって?」

夜食もシャワーも終え、腰を据えて、ネネの話を聞くことにした。

グズるネネをわたしの家に引っ張ってくるのは大変だった。ご飯を食べさせるのも、シャワーを浴びさせるのも。

ドライヤーを片付けながら、ベッドの隅で体育座りをするネネに問う。

「詳しく聞くけど」

「………なんで女口調じゃないの」

上目遣いにネネが見てくる。

そのことに関しては、前にも1度説明したような気もするが、まだ頭にアルコールが残っているのだろうか。

「オネエ言葉は客ウケがいいから使ってるだけだって言ったでしょ。家では、そりゃ普通だよ」

「イヤ……。今日は女の子で喋って。声も女の子っぽくして」

わたしは肩をすくませた。今日はそういうごっこ遊びの気分なのかもしれない。

膝を抱えて顔を埋めるネネの前に、跪く。

「しょうがないわね。で、どうして別れたのよ。言ってごらんなさい」

ネネがゆっくり顔を上げる。

「……彼氏、3日前に告られたから、付き合ったんだけど、えっちするって時に、あいつあたしの胸見て、ウワァって言ったの。信じらんない」

ネネは年齢の割に幼児体型である。そんなこと気にする玉ではないが、さすがにそんなのが3回も続けば、嫌にもなるか。

「だから、わたしのとこに来たってわけね」

「うん。慰めて、よしよしして」

ネネが腕を広げて、ハグを求める。

「抱いて」

ミチヒロさん、とネネがわたしの名前を呼ぶ。頬が上気し、呼吸が速い。

どういう意味の抱いてか、なんとなく想像がついた。

わたしも彼女も、もういい年をした大人だ。子どもじゃない。ハグでは埋められない穴の、手っ取り早い埋め方を知っている。

麻薬みたいに、溺れて浸かって何も考えなく夜を過ごせる方法を。

腕を広げるネネを上から包んで抱く。

「わたしがゲイなの知ってるでしょ」

「知ってるよ。あたしが勃たせるから。今日だけ。ミチヒロさん、タチもやるでしょ」

今日だけ、とネネは繰り返す。

腕の中のネネが目に涙を溜めて、潤んだ瞳でこちらを見つめる。わたしは、やれやれとため息をついた。

正直ネネの顔は好みだ。性に奔放でしょうのない子と呆れるときはあれど、黙っているときの横顔は目を見張るほど美しい。

遠くを見つめる姿など、白銀の狼を思わせる。

わたしはネネの頭をよしよしと撫でた。

「アンタが入れてって言ったとき、勃たなくても怒るんじゃないわよ」

怒らないよぉと、ネネがへらりと笑う。

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