夫に愛想を尽かされたら同じマンションの青年と関係を持ってしまった件について (Page 2)
「いえ…夫は…私に興味ありませんから…」
「旦那さんと仲良くないんですか?」
「好きで結婚したのは間違いないんですけど…私が、飽きられてしまって…」
夫のことを知らぬ赤の他人だからだろうか。
真琴の口からはするりと日々の鬱憤が吐き出される。
「スキンシップも、今はもうないですし…も、もしかしたら他所で女でも作ってるかもしれませんね」
自分で言って自分で悲しくなった。
そう、探ることすら諦めたが、夫に他の女がいてもおかしくはない。
冷め切った夫婦間を他所で癒すことに、怒ることすら億劫だった。
真琴は無意識のうちに俯いてしまう。
こんなことなら早く別れておけばよかったとも。
「ねえねえ、手貸して」
落ち込んだ思考の中に青年の声が響く。
よくわからないままおすおずと手を差し出すと、青年は手を握りしめにぎにぎと触った。
彼の行動が理解できず、首を傾げる。
「な、なんですか?」
「んー? スキンシップ」
青年が変わらず手を握りながら呟く。
「旦那さんがスキンシップしてくれなくなっちゃったんでしょ? なら代わりに俺がしよっかなーって」
青年を見上げれば真剣な瞳と視線が交じり、ドキリと胸が高鳴った。
二人の間に沈黙が流れる。
時計の秒針だけが胸の高鳴りを煽るようになっていた。
青年の顔が徐々に近づく。
逃げられるのに、避けられるのに、真琴は動くことができない。
ゆっくり、唇と唇が触れ合う。
青年に引き寄せられ、真琴は彼の胸の中におさまった。
何度も何度も角度と変えて口付けを交わす。
もう忘れかけていた胸の高鳴りが隠しきれない。
真琴は己の本能をどうにか押し込め、青年の胸を押し唇を離した。
「気持ちい?」
「あ…わ、私…結婚してる、ので…!」
なんとか声を振り絞り青年の誘いを断る。
それでも胸の高鳴りは治ることはなく、まるで心臓が耳についているのかと思うほどドキドキしていた。
「いいじゃん。旦那さんも他所で女作ってるかもなんでしょ? ほら舌出して」
青年は真琴の腰に腕を回すと再び近づき、噛み付くようなキスをした。
唇を舐められ、喰らいつくような口付けに下腹部が徐々に疼いていく。
こんなことだめだとわかっている。
しかし忘れかけていたこの感覚があまりにも気持ちよくて、あまりにも愛おしくて。
真琴は理性とは裏腹に、青年に応えるように舌を出した。
「んっ…んっ…」
口を開けた瞬間舌を捩じ込まれる。
まるで蹂躙されるかのように舌を絡みとられ、真琴の胸はぞくぞくとした感覚に見舞われる。
唾液が混ざる感覚に脳が痺れた。
歯茎を舐められ、口内を蹂躙され。
優しさのない、無理強いする動きにどうしてだか下腹部の疼きが止まらなかった。
「ふっ…ぁっ…はぁはぁ…」
ようやく唇が離された頃には真琴の息は上がり切っていた。
体の力が入らず、青年の胸に寄りかかる。
すると青年は肩を押し真琴を押し倒した。
「あ…あの、本当に…」
本当に続きをやるのか、という言葉は飲み込んだ。
なぜなら青年の瞳が獲物を狙う獣のようにギラついていたからだ。
今から、初めて知り合った青年に犯されるのだと、自覚させられる。
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