アイノシルシ~嫉妬と愛欲のキスマーク~
私生活が謎に包まれたモデルSAKU。彼には困ったクセがあった。愛妻である花乃が男性と2人でいるところを見ると、嫉妬を堪えられずキスマークをつけてしまう。この日も花乃が会社の先輩と話しているのを目撃し…
しなやかな筋肉。滑らかで陶器のような肌。
胸に抱く女性の華奢な肩越しにファインダーを射抜く鋭い眼差し。
紅く艶やかな唇から覗く舌先に、老若男女関係なくその場に居る誰もが釘付けになる。
SAKU…瀧川朔也は今一番勢いがあると言われるモデルであり…
*****
「お疲れ様!SAKUくん、めちゃくちゃ良かったよ!」
素肌にさらっと白いシャツを羽織っただけの格好で手渡されたミネラルウォーターのペットボトルに口をつける朔也を、撮影をしていたスタッフが取り囲む。
それを遠巻きに見ながら平岡は花乃に話しかけた。
「SAKUって瀧川の友達なんでしょ?」
「友達っていうか、高校が同じでそこからの付き合いです」
「へぇ、やっぱり高校の頃から目立ってたの?」
「そうですね。その頃にはもう芸能活動していたので」
朔也がマネージャーに連れられてスタジオを出ていく。
「平岡先輩、SAKUに挨拶してきますね」
「おう。瀧川の口利きで依頼引き受けてもらえたんだもんな。お礼ちゃんと言っておいてくれよ」
平岡に笑顔で返事をして、花乃は朔也の後を追った。
*****
スタジオで一番広い控室。
姿見とソファ、奥には畳のスペースもついており快適に過ごせるようになっているが、朔也のスケジュールはタイトで滞在にほぼ隙間時間はない。
「朔也、今日はありがとう」
「全然。花乃からの依頼を断るわけないだろ」
「ん…」
「ただ…さっきの奴、仲良いの?」
「さっきの…ああ、平岡先輩。仲良いってか普通に一緒に仕事してる…ん!」
いきなり手を引き寄せられ、花乃は身体のバランスを崩し朔也の胸に倒れ込んだ。
唇を唇で塞がれ舌が唇を割って侵入してくる。
壁側に追い詰められ、押し退けようとしても指と指を絡められ身動きが取れない。
くちゅ、くちゅ、と舌が絡まる音が静かな控室に響く。
「だっ…駄目だよ。仕事中だから…」
「俺もこんな事するつもりなかったのに。あんな近い距離で楽しそうにしてるの見せられたら妬ける」
撮影とはいえ、ついさっきまで自分は上裸でモデルと絡んでいたくせに。
そんな言葉が出そうになってグッと堪える。
その仕事を依頼したのは自分なのだ、と、花乃は言い聞かせた。
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