バーの優しい常連客に誘拐されて、初めてを奪われちゃいました (Page 2)
あの日、彼の車に乗ったのが間違いだった。
「遅い時間だし、送っていくよ」
その申し出に、私はためらいながらも頷いてしまった。黒い車の中で交わした他愛のない会話も、今となっては虚しい。
目を覚ますと、見知らぬ部屋にいた。黒で統一されたインテリア、高価そうな家具や飾り棚。その空間に圧倒されながら立ち上がろうとすると、首に冷たい感触が走った。
「なにこれ…?」
手を伸ばすと、硬い金属。首輪だった。鎖で壁に繋がれている。そんな自分を見て、頭が真っ白になった。
「気がついた?」
振り返ると、そこにはケントさんが立っていた。でも、そこにあったのは、いつもの穏やかな微笑みではなかった。
「震えてるね。亜子ちゃん、小動物みたいで本当に可愛いよ」
彼は私に近づき、髪をそっと撫でた。その手が滑らかに首筋を下り、肩に触れ、胸元へ。
「や、やめて…!」
私は恐怖で声を振り絞った。でも、彼はまるで楽しむように笑みを深めた。
「取って食ったりしないって言ったけど、それは嘘だよ」
その言葉に、背筋が凍りついた。
「君みたいな子を放っておけるわけないだろう?僕を誰だと思ってる?」
「…建設会社の会長、でしょ…?」
震える声でそう答えると、彼は派手なジャケットを脱ぎ捨てた。その腕に刻まれた刺青、無数の傷跡。それらは、彼がただの会社員ではないことを雄弁に物語っていた。
「不正解」
その言葉に、私は全てを理解した。優しかった笑顔も、紳士的な態度も、すべてが計算されていたのだ。
「君を見た瞬間から決めてたんだ。君は僕のものになるって」
彼の手が再び私の髪を撫でる。その手の冷たさと、どこか熱を帯びた視線に、私はただ震えるしかなかった。
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