今はまだ騙されていてね (Page 2)
そんな紆余曲折があり、付き合い始めた先生は教師の仮面が外れると普通の青年だった。同年代よりは大人だし、落ち着いてるけど、人並みにやきもち妬いたり、よく笑う。
教師という職業は思ったよりずっと忙しくて、中間や期末考査の時期は会えないことも多い。その時期は大体私もレポートとかで忙しい時期だけど。休みも部活の顧問とかでなかなか時間が取れないし、電話もSNSでのやり取りもしてるけど、既読が付かないこともしばしば。それでも忙しい合間を縫って時間作ってくれる。
デートもした。ちょっと遠い遊園地行ったり、映画行ったり、水族館も行った。なるべく知り合いに会いたくないのもあり、レイトショーや閉館間際だったり、ややさびれた遊園地だったりしたけど普通に楽しかった。
帰り際に触れだけのキスをするようになった。
「先生、キス以上のことはしないの?」
「20歳超えてお酒解禁したら、考えてもいい。それまでにその先生呼びの癖も直せよ。世間様の視線が痛いから」
まあ、成人したといっても選挙権があるだけでお酒もたばこも20歳からだし。とそれで納得した。20歳になるまでは子供扱いも仕方がないと。その時点で20歳まで2年をとっくに切っていた。すぐだと思った。実際すぐだった。
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つい先日20歳になった。
先生(呼び方の癖は抜けなかった)は20歳になった時お祝いしてくれたし、いつもよりちょっといい食事連れて行ってくれたし、華奢なネックレスもプレゼントしてくれた。
思い切って、お泊りしたいといってみたら来週ならいいよとあっさり許可された。いつもより気合い入れて可愛い勝負下着まで準備して訪れたその日は何もなくご飯食べて、テレビ見てそろそろ寝るかと普通に寝ただけだった。まあ、気分じゃない日もあるかと思った日から半年たった今もまだキスどまりである。
「先生、いつになったら抱いてくれるんですか?」
「癖が結局抜けなかったな」
「東吾さん、いつになったら抱いてくれるんですか?」
「…大学卒業したらとか…?」
それ以上は何をどう聞いてもだんまりだった。そちらには年上の男としての矜持とやらがあるのなら、こちらには女の意地がある。かくなる上はその矜持とやらがなくなるような色仕掛けしかない。
「全力で誘惑してやる!」
次のデートの日は予報では雨だから、おうちデートも提案しやすい。次こそ勝負だと意気込んだ。
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