あちこちで交わり合う薄暗い部屋の中で
同僚たちと宿をとって学生時代よろしく夜通し飲んで食ってのどんちゃん騒ぎ。しかし男女入り乱れての雑魚寝がただ眠るだけで終わる訳はなく…。あちこちで交わり合う同僚たちの熱い吐息と水音が部屋中に響いている。かくいう私も、背後から同期の彼に触られ、快楽に飲み込まれていく…。
なんだかフワフワしていい気持ち…。
背中もあったかいし…。
…ん?
少しの違和感に、そっと目を開ける。
いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
部屋は薄暗くてよく見えない。
「目が覚めた?」
突然耳元で囁かれる低い声に、思わず背中がぞわりとし、ビクッと跳ねてしまう。
「しっ!みんな寝てるから静かにね」
耳元の低い声は続ける。
ぼんやりしていた頭がだんだんと冴えてきた。
まず、私のこの体勢だけど…。
後ろから抱きかかえられるようにして横になっている。
…全く覚えがない。
そして、私を後ろから抱きかかえて耳元で囁く、低い声の主は…。
「おはよ。元木だよん」
小声だけど、いつものお調子者のテンションは変わらない。
同期の元木くんだった。
全く覚えがない!
「ねぇ、なんで私たちこんなことになってるの?」
みんな寝ているということなので小声で尋ねる。
さっき胸触ってなかった!?と思ったけど、寝ぼけてたのかもしれないし…と口には出さなかった。
「え?今日はみんなでお泊まり飲み会の日じゃん?」
…そうだった、思い出してきた。
―――
長期連休に仲のいい同僚たち数人で泊まりに行こう、という話が出ていた。
学生の頃のように、夜までお酒を飲んで、そのままテキトーに寝て、ワイワイ楽しもうぜ!という企画。
宿を男女に分かれて二間続きで取って、間のふすまを取り払って部屋飲みをしよう!と盛り上がっていた。
しかし実際は、男女入り乱れての雑魚寝になっていた。
―――
「でもなんで元木くんが私を…その…抱きしめてるわけ…?」
言葉を選びつつ、おずおずと質問する。
「そろそろ目が慣れてこない?見てみてよ、部屋の中」
そう言われて暗闇に慣れた目をこらすと、あちこちに転がる人影…と?
重なり合う2つの人影がチラホラ…。
耳を澄ますと荒い吐息や水音も聞こえてくる。
えっ、ヤッてんの!?
みんながいるのに!?!?
私は混乱と動揺を隠せずにいた。
すると、
「マイちゃん1人で寝てたから危ないと思って。ボディーガード?みたいな?」
またいつもと変わらぬ調子で答える。
逆に、なんでいつも通りでいられるのか、私には不思議なんですけど…。
さっきから耳元で囁かれるから、ちょっとぞわぞわして変な気持ちになっている自分が恥ずかしい…。
それに…。
元木くん、私のこと後ろから抱きしめてるじゃない?
当たってるのよ、あの、硬いモノが…。
でも、重なり合う影の存在を知ってしまったからには、この硬いモノには気付いてないフリを続けなければ。
でなきゃ私たちも…。
って!何考えてんのよアタシ!!
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