ワンナイトだけじゃ物足りないの (Page 5)

「俺もう一回シャワー浴びるけど、千波はどうする?」

「今はちょっと無理」

腰から下の感覚が遠い。腕に力が入らない。てか、起き上がれる気がしない…。ああ、そうみたいな適当な返事をして、さっさとシャワーを浴びに行ってしまった。そいう言うところが隼人らしい。そういえば、あの時は自分だけちゃっかりアラーム掛けてたよね。
15分後くらいに濡れた髪を拭きながら隼人が戻ってきて、私の隣で横になる。

「前も思ったけど、相性最高だよな。これ以上ないって位よかったし。ちょっと前までそんな関係じゃなかったのに、びっくりするぐらい肌に馴染むんだよな」

「…そう、だね?」

「なんで疑問形なんだよ」

確かにめっちゃ乱れたけれど、信じられない位気持ちよかったけど、肌に馴染むからって足腰立たなくなるまであれやこれやされた身になってみろ。大体のことは些末な問題になる。

「ここまでやっといて、友達に戻れんの?」

「え、お前友達に戻る気でいんの?」

私の何気ない一言にびっくりしたように隼人が声を上げる。質問を質問で返さないで欲しい。どう答えていいか分からなくなるじゃないか。

「セフレとか不健全じゃん。確かに相性良かったと思うけれど、それ込みの友情関係って私基本的に無理。不毛ってか、なんのしがらみなく終わる関係でもないじゃん、元々が」

比較的よく会う友達。一番気のあう男友達。縁を切るのは簡単だれど、積み重ねた年月が繋いだものを切るにはためらいがある。

「千波の頭には恋人昇格っていう思考はないのね。どうせ、あたしのことなんて遊びなのよ。一時の気の迷いですますつもりなんだわ。ひどい、責任取ってと迫ってきたのはそっちなのに、終わったらポイなのね」

よよよと泣き崩れるふりをする。この男のこういうとこが嫌いなんだわ。

「微妙にリアルを混ぜた小芝居やめたら。今、明らかに神経を逆なでされてイラァッと来たわ」

「俺と付き合うのは無理?やっぱり嫌だった?」

さっきのおどけた表情から一転、不安そうにそういわれる。嫌でも無理でもないとは思うけれど、友達時間が長かった分何か変わるのかとも思う。でもこれを機に付き合うっていうのも自分的にはアリよりのアリだ。今言えることは一つだけだ。

「前向きに考えておくよ。まずは普通のデートがしたいな」

「じゃあ明後日、水族館いかない?厳密には明日だけど。今、カップル割やってんだよ」

「いいよ」

くすくす笑いながらまた2人して柔らかいベッドに沈み込んでいった。

Fin.

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