ワンナイトだけじゃ物足りないの

・作

男友達の隼人と朝チュン、しかも記憶なしという状況に陥ったアラサーの千波。思った以上に動揺してたのか、仕事も凡ミスが続く。早く忘れたいはずなのに、なぜか夢で夜のことがフラッシュバック。もやもやした気持ちを整理するために話そうということになって…

いつもとは違う電子音で目が覚めた。

「目覚まし掛けといてよかった。目覚ましが鳴らないと起きれねぇの」

「お、おはよう…」

「おはよ、千波。身体大丈夫?」

同じベッドで隣に男友達の隼人が半裸で寝転んでいる。
学生の頃からの友人で飲みに行くことになり、そこに隼人もいた。そのあと二次会でカラオケ行く人と帰宅する人で別れて、隼人に『よかったら、飲み直さない?』と言われて、居酒屋行ったんだっけ。それで…どうなった?
ダメだまったく思い出せない。見た感じラブホ、裸、明らかに事後を訴える腰。

「私何か迷惑をかけたんじゃ…」

「千鳥足で呂律怪しかったけど、吐いたりはしてないよ。服はソファーの上でジャケットはハンガーに掛けといた。覚えてないの?」

「すみません…」

思ったほど醜態はさらしていないけれど、違う問題で頭が痛くなってきた。いや、この頭痛は二日酔いの症状か?アラサーにもなって、男友達と朝チュン。しかも記憶なし。過ちで済むの20代前半だけだろ。

「まあ、お互い大分酔ってたし?お酒で失敗することもあるって。飲み直そうって言った俺も悪かったし」

押し切られる形でそんなもんかと思ってしまったあたり、まだアルコールが残っていたのかもしれない。着替えの前にシャワーだけ浴びて、最低限のエチケットとしてメイクして、着替えた。アメニティーの充実したホテルでよかった。化粧水も乳液もあったし。

「お待たせ」

「ん、じゃあ行こうか」

夜明けの爽やかな風をうけながら思ったのは、お互いフリーでよかった。私たちは誰も裏切ってない。それだけがほとんど唯一の救いだった。

*****

「どーしたの、千波。これ一桁づつずれてるよ」

「え、あ…、ごめん、すぐ直す」

「そうだけど、らしくないね。体調悪い?顔色は悪くないけど。アレの日?」

友達の紫乃が私の顔を覗き込む。
さっきは転びかけて書類落としちゃうし、データ違うフォルダ入れちゃうし、今度は桁間違いか。新人の頃は時々やっては怒られた凡ミスが続く。思ったより動揺してるのか私。気の置けない友達だけに一夜の過ちがここまで響くとは…。

「ちょっと、寝不足で。お昼ご飯食べたらちょっと眠くて集中で来てなくて。気が付いてくれてありがと」

「夜更かしはお肌の天敵だぞ。そんな申し訳なさそうな顔しないの、私と千波の仲じゃない」

明るくそういってくれた。本当に救われるいい友達持ったな。友達の言葉で隼人の顔を思い出し、慌てて振り払うように軽く頭を振った。

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