遠距離彼氏が泊まりに来るたび抱き潰してくるので困っています

・作

遠距離恋愛をしている美亜には、ある悩みがあった。それは彼氏の勇士が浮気をしているかどうか……ではなく、月に一度会える日に抱き潰されてしまうこと。でも、本当は悩んでなんかいないのかもしれない。今月もまた、快楽に溺れる日がやってくる。

「えっ、美亜って遠距離恋愛の彼氏いたんだ!」

職場での昼休憩、同期の一人に驚かれる。
それもそうだよね、一度も彼氏がいるとか話したことないし、飲み会にも積極的に参加しているから、フリーと思われるのも無理はない。

「遠距離ってどう? やっぱり浮気の心配とかする?」
「どのくらいの頻度で会っているの? 寂しくなったりしない?」

なんだか学生の頃に戻ったような気分になりつつ、丁寧に一つずつ答えていく。
遠距離だからどうということはない、浮気の心配もない、月一で会っている、寂しくはない。
そう答えると、それ以降は特に気にされることなく、同期の彼氏の愚痴だったり、好きな人の話だったりをして昼休憩が終わっていった。

私にほぼ悩みがない様子だったので、みんな興味を無くしたのだろう。
悩みはないと言えばないけれど、あるといえばある。
それは彼氏である勇士がうちに来る、月に一回のお泊りでのことだ。

*****

土曜日。勇士がうちにやってきた。

「美亜ちゃ~ん! 会いたかったよ~!」
「私も。長旅お疲れ様」

駅まで迎えに行くと言ったけど、勇士は私にそんな苦労はさせられないと自分で家までやってくる。
荷物はボストンバッグ一つのみ。身の回りのものは大方私の家に置いてあるから、荷物はそれだけで済むのだ。
玄関先で軽く抱きしめ合った後、勇士を家に上げて昼食を食べる。
私が作った簡単なパスタだけでも、勇士は顔をほころばせて食べてくれる。

「うまぁ! 本当、早く美亜ちゃんの手料理を毎日食べられるようになりたいなあ」
「じゃあ、飽きられないようにもっとレシピ覚えないといけないね」
「へへっ、無理しなくてもいいけど、そうしてくれるなら俺はすごく幸せ者だね」

そんな会話をしながら食事を進め、食べ終えるとあの時間がやってくる。

「美亜ちゃん…」

食後のコーヒーを飲む暇もなく、勇士は私の手を取って寝室へと誘い込む。
私はこの時間が来るとわかっていたから、朝からシャワーを浴びて用意をしていた。
そんなに気が無いふりをしながらこくりと頷き、勇士と二人で寝室へと入っていく。

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