ボサ髪ダサ男に犯されて (Page 2)
「そのシリーズ好きなんだ。もしかして、そういう願望があるとか…?」
生暖かい息が耳元にかかり、一気に総毛だった私は素早く振り向き腕を振り払う。
目線の先にはさっきとは打って変わって、自信満々に前髪をかき上げる店員さんがいた。
は…?待って、誰?
切れ長の目が真っ直ぐに私を捕らえて離そうとせず、一方の私も蛇に睨まれた蛙状態で何故か身体が動かない。
漫画を胸に抱えたまま一歩も動けずにいる私の方に、少しずつ近づいてきた彼はひょいと私の腕の中から漫画を取り上げる。
「ふーん、今回は無理矢理犯される系か。前回はセクハラだったよね?」
私が買おうとしているのは、大好きなTL作家さんのシリーズもの。
言葉の選び方が素敵で、まるで自分がその場にいるような臨場感を感じさせてくれる。
確かに内容はエッチだけど、よく知らない店員さんに人の趣味嗜好をあれこれ言われる筋合いはない!
それに、さっきからずっとこっちを見てニヤついてるし、気持ち悪すぎっ…!
ホント、何なのこの人。そして今はどういう状況なわけ!?
自分が買おうとしている漫画のことを、あれこれと店員さんから言われたのは生まれて初めての体験だ。
というか、普通は多分だけど絶対にありえない。
そう思うと、疑問だらけの頭の中が怒りでいっぱいになってくる。
「何なんですか!私が何を買おうと、あなたには関係ないことです!もう、いいです。他の店員さんに変わってください!」
「ごめんね、夜は俺一人でやってるんだ。っというか、この店僕のだからさ」
うそでしょ!?もう、嫌だ。残念だけど漫画を買うのはやめよう。
それから、今後一切この店には近寄らないでおこう。
私は近くの本棚へ適当に漫画を置くと、踵を返して出入口へと向かった。
早く帰りたい…そう思っていたのに、再び後ろから腕を掴まれてしまう。
「離してください!さっきから何なんですか!?」
怒った私は、後ろで相変わらずニヤついている店員さんをこれでもかと睨みつけた。
「さっきからじゃないよ?」
「は…?」
「初めて店に来てくれた時からずっと見てたよ、一目ぼれだったんだ…七瀬莉子さん」
やばい
防御センサーが逃げろと呼びかけてくる。私の名前を知っているのはきっと、ポイントカードを作った時だ。
急いで店から出なくちゃ…!慌てて出入り口の自動ドアに手を伸ばす…。
しかし、自動ドアは何も反応しなかった。
「どうして開かないの!」
閉ざされた自動ドアをバンバン叩きながら、私はうんともすんとも言わないガラス扉を叩く。
「手が痛くなるよ?それに、さっき言ったでしょ?ここは僕の店だから自動ドアにロックをかけるくらい簡単だよ」
「他にもお客さんが残ってるでしょ!?」
私は彼をキッと出来るだけ強く睨みつけながら店内を見渡し、すみませーん!と声を張り上げた。
「あはっ、うちは小さい書店だからねぇ。この時間は滅多に客は来ないんだ」
残念でした…と言いながら彼はこちらに近づくと、素早くお尻と脇に腕を滑り込ませて私を抱き上げる。
そして、奥にある『倉庫』と書かれた扉に向かっていった。
「離して!下ろしてよ!離してってばっ!」
どんなにもがいても、がっしりと捕まえられて逃げられず、見た目以上に力があることが伝わる…。
それでも私は声を張り上げて必死に抵抗した。
いくら恋愛経験が少なくても、これから何をされるかくらい予想できる。
「もう、あんまり騒ぐと疲れるよ?それに、これからもっとぐったりしてもらうんだから…さ」
店員さんは倉庫を片手で器用に開けると、すぐ近くに置かれていた折り畳み椅子に私を下ろした。
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