私の彼氏が○○がしてみたいと言い出した
家業の薬局を手伝う女子大生の那美には彼氏がいる。製薬会社で働く彼氏の澄人は優しくて、頭もよくて、イケメン。と身に余る彼氏。ところがある日やってみたいことがあると言い出し、それがとんでもないことで。どうしよう新しい扉が開いちゃう…
うちの家業は薬局だ。祖父と父が薬剤師で今時珍しい小さな薬局を営んでいる。駅前に処方箋も扱っている大きなドラッグストアもあるけど、昔からきているおじいさんやおばあさんもいて細々ながらも続いている。
母は仕事が趣味みたいな人で現在もバリバリフルタイムで働いている。私は学生なので毎日は無理だけど、休みの日や午前だけの日とかは店内の掃除や店番をすることもある。そこで出会ったのが製薬会社で働いている澄人さんだ。
時々新しい薬とかストックが少なくなった薬を持ってきてくれる人で、来てくれた日に私が店番してたら多少世間話をする仲だった。それが連絡先を交換することになり、休みの日はたまに出かけるようになり、気が付けば付き合っていた。
なんとなく不安になったこともあり、
「私達、付き合ってるでいいんですよね?」
と聞いてみたことがある。その言葉に少しびっくりした顔してこう言われた。
「確かに何か明確な始まりがあったわけじゃないけど、付き合ってると思ってるけど。それに、僕は那美のことが好きだよ」
ここまで言われて不安になる方がおかしいだろう。
優しくて、頭もよくて、イケメン。本当に私には身に余る彼氏だ。そうだからこそいつも優しい彼からのこの発言には度肝を抜かれたとしか表現しようがない。ところがある日
「僕に那美を縛らせてほしい」
「…行動とか交友関係とか?」
「那美の身体を縛りたい」
「うん?!」
いきなり前触れなく縛りたいなどと言われて、普通の神経なら比喩表現だと思うだろう。交友関係やSNSなどを制限されるのかと思った。ところが想像とは180度とは言わないけど、かなり斜め上の返答だった。
衝撃の発言にしばらく放心。二人の間に静寂が落ちる。見つめ合っていてもロマンチックな雰囲気よりは、どっちかのボタンを押したら爆発する爆弾を前にしているような緊迫感が漂っている。
「澄人さん、何か変なものでも食べた?それとも誰かに何か言われたの?」
「僕は正気だよ。しいて理由を言うなら好奇心。もしくはマンネリ防止」
それでなんで縛るなんて言う結論に達するのか。全くよくわからないことが分かった。
「目隠しも、さるぐつわも嫌だよ。苦しそうだもん。低温ろうそくも鞭も嫌いだよ。痛そうだもん」
「叩いたり、ぶったりはしないよ。さるぐつわもする気はなかったし、目隠しはしたかったけど別にいいし。ね?絶対に痛いことはしないし、そうムリな体勢もさせないから。お願い」
耳元でそうささやかれ、断るということができない弱い私をどうか許して欲しい。
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