霊愛奇譚 (Page 3)

「あ!うああ、そこ。そこよ。熱い。あついぃ」

足の先から頭頂部まで火照り燃え上りそうな快美感に襲われて、私はあられもない声を上げました。

「あ、うあん。あん。あなた。あなた!」

知らず知らずに腰が浮き、夫の指の動きをもっと味わいたいと貪欲に動きます。

指の動きが速くなりクチャクチャクチュクチュと水っぽい音が激しくなって、からだがガクガクと震えます。

久しぶりに自分の指でなく、愛し求めていた夫の指で私は中イキしました。

「加奈子、愛してるよ」
膣口に当てられている肉が夫のペニスであることはすぐに分かりました。

私は脚を広げシーツに指を絡ませて夫の侵入を待ちました。

グググっと入ってくる夫のペニスの圧倒的な存在。

夫が死んで指以外の挿入を味わってなかった私の膣は少し狭まっていて、そこを押し開いて入ってくる夫のそれ。

私は少しの苦痛と圧倒的な快感に、嬉しい悲鳴を上げました。

「あ、はああ!あう。来て。もっと来てぇ」

私の言葉に応えるように抽送が激しくなりました。

パン・パン・パンと夫の肉と私の肉はぶつかり合い、私は久しぶりの夫のペニスの味わいになりふり構わず喘ぎ、子宮から伝わる熱波に、泣きながら嬌声を上げました。

「うあん。あふっ。ああん。気持ちいい。気持ちいいよお」

私は夫の名前を呼びながら泣きじゃくり、何度も何度も達っしました。

気を失う一瞬、私は夫の姿をちらりと見ました。

ぶら下がった肉片。

顔の半分が白骨化していて。

それはそれは恐ろしい姿でしたが。

やはり夫でした。

恐ろしさよりも、その姿すら愛おしく、私は愛の言葉をつぶやいて気をやりました。

*****

やはり姿を見てしまったのがタブー破りだったのでしょうか。

それ以来夫が出てきてくれたことはありません。

ただ私のからだには変化がありました。

生理が止まりました。

私は妊娠したのです。

生きていた頃の夫とはどんなに愛し合っても子供はできなかったのに。

私はおなかを撫でながら、ただただ満たされていました。

真実を知るのは私だけ。

私は夫が死んで早々夫以外の男と通じて子供を作った最低の未亡人として非難されることになるでしょう。

しかし私はこの子を産みますし、この子を心から愛するでしょう。

一つ不安なのは、なにせ幽霊との子供なんて聴いたことがありませんし、いったいどんな姿で産まれてくるのかということです。

さすがにあの晩の夫の姿のようでは世間様に受け入れられませんので、ひとの形は取っておいてもらいたいと、私は願うのです。

Fin.

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