霊愛奇譚
加奈子は夫を半年前に亡くした。ただひたすら夫が恋しく、しかしもう愛した夫はおらず、加奈子は自分で自分を慰める空しい日々を過ごしていた。そんなある日の夜。いつも通り自分を慰めていた加奈子は不審な人物にベッドで羽交い絞めにされ―――。
心から愛した夫が死にました。
半年前のことですが。
私は涙で枕を濡らし、愛液で下着を濡らしていました。
床で死んだ夫を思ううち最初はただひたすら泣くだけでしたがそのうち彼の柔らかな愛撫が恋しくなって、私は自分で自分を慰めるのが日課となっていました。
「あ、あん。んん。あん」
クリトリスをもてあそんで軽くイッたあと、愛液のついた自分の細い指を見てそれが夫のものでないことを再確認し、虚しさで泣いていました。
あの人の無骨な指でしか味わえない快楽があったことを思い知るから。
そんな夜が常態化していました。
ある夜のことです。
私はいつものように床につき、いつものように一人寝の淋しさに気づき、しくしくと涙をこぼしました。
指はそんな自分を慰めるために自然と下着の中へ。
陰毛をかき分けて小さな粒に指の腹を当てるとそこはすでに潤っています。
「あ……」
クチュクチュと体液が泡立つ音がし始めます。
私はパジャマの前を開けて、空いた手で乳房を揉みしだきます。
思い出すのはあの人の声、体温、のしかかるからだの重さ、それと、風呂でも流せ切れなかった少し疲れた夜の体臭。
「ああ、あん」
さんざんあの人に揉まれ、いじられ、吸われた乳首がピンと硬くなります。
私はそこを指で刺激しながら、クリトリスへの愛撫も速めます。
「あ、ああ。ああああ!」
絶頂を迎えようとしたその時でした。
とつぜん背後から強い力で抱きこまれたのは。
「なに?」
家の施錠はちゃんとしたはず。
夫が亡くなってからセキュリティには敏感になっていました。
でも。
いつの間にか私の知らないうちに家に侵入してベッドに潜んでいたのでしょうか。
「いやあっ」
私は身をよじって逃れようとしましたが、私を抱き込むその腕の力は強く―――。
「加奈子」
そう私の名前を呼ぶその声は夫のものでした。
「え」
私は背後を見ようとからだを浮かせようとしました。
「見てはだめだ。加奈子」
私をかき抱いていた手が、そっと私の胸を包みこみます。
先ほどまで愛撫を与えていた乳首はまだ半分硬く、触れたその手はそのことにすぐ気が付いたようでした。
やわやわと胸を揉みこむと、乳首をつまんでくりくりとこね始めました。
それは夫の指の感触でした。
「ああ。あ。うそ。あなた、なの?」
答えはなく、ただ指が私の胸を蹂躙します。
ツンツンと甘い痺れを感じて、私の目尻に涙が浮かびます。
「あ、あなた。ああ」
こんなことってあるのでしょうか。
「振り向いてはいけないよ」
背後の気配はそう言うと、私をいましめていたもう一方の腕の力を緩めました。
「あなた」
「加奈子」
耳元で夫の声で名前を呼ばれ、両方の乳房を揉みしだかれ、乳首をきゅっとつままれ、私は戦慄とともに、到達してしまいました。
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