罪づくりの皇妃殿下 (Page 2)
結婚して初めて一人で過ごす夜。
いつもはどちらかの部屋で寝ていて、必ず隣にはルークの温もりがあった。
でも、今日は背中が寒い。
冬が訪れたせいで寒いのかもしれないけれど、この寒さは違う。
単純に、ルークが恋しくてたまらないのだ。
窓から差し込む月明かりを見ながら、ルークの滑らかに輝く髪を想い出して、余計寂しさが募った。
私は寝付くことができず、ベッドの端から端までゴロゴロと転がってみたり、ふんわりした枕に顔を埋めてみたりする。
それでも眠気が全く来ないので、諦めて本でも読もうと本棚の方に向かった。
コンコンコン
誰かがドアをノックする音がする。誰だろう?
侍女が水を持ってきてくれたのだろうか。
「はい」
「失礼いたします」
「ウィリアム様?どうしたのですか?まっ、まさかルークの身に何かあったのでしょうか!?」
「いっいえ、何もありませんよ。夜の見回りに来ただけです。大丈夫ですので、落ち着いて下さい」
ルークに何かあったと驚いた私は、本棚の方から急いでウィリアム様の元へと駆け寄り、彼の両腕を掴んでしまっていた。
后としてあるまじき行為だ…。
「すみません、つい…心配になってしまって」
「ハハッ、かまいませんよ。心配になるのは当然です」
ウィリアム様は一瞬驚いた顔を見せた後、くしゃっとした笑顔になった。
いつもは氷のように冷たい眼差しと、受け答えする以外ピクリとも動かない口元。
そんなウィリアム様が笑った…!レア中のレアである。
それにしても、笑うとガラス玉が転がるようにキラキラしていて…カッコイイというよりかは綺麗な気がする。
仏頂面ばかりしていないで、今後は少しくらいニコリと笑ったらいいのにと私は心の中で思った。
そんなことを考えていると、ついまじまじと顔を見つめてしまっていたようで…。
「リリス様、どうかなさいましたか?」
「あっ!いえいえ、何でもありませんよ。えぇっと…ちょっと眠れなかったので、本でも読もうと思っていたところだったの」
「どのような本がお好きなのですか?」
そうね…と私は本棚の前で自分の好きな本をウィリアム様に紹介する。
私が本について熱く語っている間、彼は言葉を挟むことなくただ静かに聞いてくれて、なんだか嬉しかった。
新しい友達ができたような気分がする。
「それでね、この本はどんなに主人公が頑張っても、絶対に恋心が報われないのよ」
「…」
「ウィリアム様?どうかなさ…っ!!!」
振り向いたと同時に、私はウィリアム様のたくましい腕に抱きしめられていた。
ルークとは違う男性の匂いを近距離で感じたのは初めてで、恐怖を覚える…。
「やっ!ウィリアム様…!どうなさったのです!?離してください!」
必死に腕の中でもがくも男の力に敵うはずもなく、気づけば私はベッドへと押し倒されていた。
「どういうつもりですか!?私は皇帝の妻なのですよ…!」
真上に見える、ウィリアム様の表情がさっきとはまるで別人のようで怖い。
絶対に逃がさないと鋭い眼差しが私を捕らえて離さず、私は蛇に睨まれた蛙状態…。
涙が自然と零れ落ちる。
「ウィリアム様…お願いです。離してください」
「その涙…余計に誘うんですよ」
え?そう思った瞬間、ウィリアム様が私の両腕を片手で真上に上げ、シーツに縫い留める。
「ウィリアムさっ!んんっ、ふぁ…あっ」
熱を帯びた唇が私の唇へと押しつけられ、思わず声が出てしまった。
「キスだけで可愛い声が出るんですね。これは楽しみです…」
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