夏の音は花火?それとも…淫らな音? (Page 2)

お祭り当日、家まで迎えに来てくれたりっちゃんを見た瞬間、私の心臓が飛び跳ねた。
だって、りっちゃんの浴衣姿がめちゃくちゃカッコよかったんだもん!

それに加えて優しい眼差しで、慣れない下駄に苦戦する私にやんわりと差し伸べられた手がさらに私の心臓をおかしくさせる。

「まめとか出来ない?普通にビーチサンダルでもよかったんじゃない?」

「何言ってるの!?浴衣に下駄だからいいのよー!トータルコーディネートが大事なんだからっ」

猛反論する私を見ながらクスクス笑うりっちゃんに見惚れてしまう。
いつまでも、その優しい笑顔を見ていたい。

「紗奈?早く祭り行くよ?」

さっきまで笑っていたりっちゃんが不思議そうな顔になり、私を見つめてくる。
わわっ…!その顔も反則級だって!!

思わずうつむいた私の手を自然に握りながら、りっちゃんが先に歩く。
大きな背中に今すぐにでも抱きつきたい…!でも、今はまだ我慢。

絶対に仕留めるから…私狙いを定めるように片目をつぶりながら、りっちゃんの背中に再度誓う。

「あっつーい!去年こんなに暑かったっけ!?」

「紗奈、去年も全く同じこと言ってたよ」

私とりっちゃんはそれぞれかき氷を持ちながら、人込みを歩く。
今現在の目的は近所のおじさんがやっている焼鳥屋へ行くことだ。

それから焼きそばと飲み物を買って、花火が始まるまで小学校の校庭に敷かれたビニールシートの上でダラダラ過ごすことが毎年の恒例になっている。

でも今年は違う。
私の脳内では違う場所でくつろぐことになっているのだ。

「りっちゃん、りっちゃん!今年はちょっと違う場所で花火見物しない?」

「違う場所?どこ?」

「ふふっ、いいからついて来てよ」

りっちゃんの前を歩きながらニヤニヤが止まらない私が提案した場所は、メインステージになっている小学校から少し離れた神社だった。

この神社は小さい頃からセミ取りに来たりと、私たちには慣れ親しんだ場所。
りっちゃんは久しぶりに来たなぁとか言って、境内の中をきょろきょろしながら歩き回っていた。

もしかしたら先客にカップルがいるかなと思っていたけれど、ラッキーなことに誰もいない。
遠くで祭りの目玉であるカラオケ大会の音が聞こえてくるくらいで、かなり静かな空間だった。

見る人が見たら、古い神社が薄気味悪く感じるかもしれない。
でも、私たちには懐かしい場所ってこともあって、けっこうテンションが上がっていた。

「ここなら人もいないし、少し遠いかもだけど花火もしっかり見えるよ!」

「なるほどなぁ、神社で花火を見るのは思いつかなった」

私たちは神社の脇に茂っている雑木林の奥の方へ行き、町が見下ろせる秘密のスポットに腰を下ろす。
安定の美味しさの焼き鳥に舌鼓を打ちつつ、私はあることを実行することで頭がいっぱいになってしまい、焼き鳥を食べる手がいつの間にか止まっていた。

「どうした?具合でも悪くなった?」

急に口数が減った私を心配してくれるりっちゃんが、熱はないかと私のおでこに手を当てる。

ほんのりと温かい手…。この手に何度助けられてきただろう。

私が泣いてるときには優しく拭ってくれて、怒っている時にはそっと背中を撫でてくれた。
どんな時にもすぐに差し伸べてくれる、この温かな手を離したくない。
私以外の誰にも渡したくない…。

「紗奈?」

ずっと黙ったままの私をいよいよ本当に心配したりっちゃんは、おでこから手を離しながら私の顔を覗き込もうとした。

ずっとこのままの関係はもう嫌…。

私…

「私、りっちゃんの彼女になりたい」

「へ…?」

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