雨も滴る可愛い同僚を泣かせるはずが、なぜか私が啼かされてしまいました
可愛い顔をした同僚の海翔は私の秘かな憧れの人。恋愛感情ではなく、人間として羨ましく思っていた。でもある日の飲み会帰りに大雨に見舞われた私たちは流れでビジネスホテルに1泊することになるのだった…。
「もう少し、じっとできないの?」
「…まだ続けるの?」
当たり前じゃんと言って私は彼のたくましい首筋に噛みつく。
その瞬間、彼は短い悲鳴と共に甘い声を上げる。
もっと乱れる彼の顔を見たい…。
私は息がどんどん乱れる彼に覆いかぶさると、腰をゆっくりと前後させた…。
*****
カタカタカタカタ…
キーボードを高速で打つ音が部屋中に響く。
しかもその音は一ヶ所からだけではなく、部屋のいたるところから聞こえていた。
時刻は22時を過ぎたところ。
同僚がやらかしてしまったミスをみんなでカバーするべく、数名で残って残業中だ。
パソコンの画面を見過ぎた私は、目の異常な乾きを覚えて思わずため息をつきながら目元を揉みほぐした。
「雪奈~、大丈夫か?俺も目が限界を迎えようとしてるぜ~」
私の向かい側の席から、ひょっこりと顔を出したのは、同僚で同い年の海翔。
少し茶色に染めた髪がサラッと揺れ、真ん丸な目を眠そうにこする彼は、その可愛い雰囲気から会社でモテモテだった。
正直、彼の見た目と明るく陽気な性格が羨ましくて仕方ないのは、ここだけの話。
私は必ずと言っていいほど、初対面の人から怖がられる。
仲良くなった後でその理由を聞くと、色白で切れ長の目が冷たそうで、近寄りがたい感じがすると言われた。
それは昔から知っていた…。
学生時代から『クールそう』『冷たい感じだね』『しゃべると普通なんだね』など、言いたい放題されて傷ついたことが何度もあった。
だから、社会人になったらそう言われないように、自分では努力してきたつもりだった…。
それなのに、入社してしばらくした頃に、あっさりと同僚から言われた時はショックだったのを覚えている。
もちろん今は仲良くなったので言われることはないが、海翔を見ると、どうしても羨ましく思ってしまう自分がいた。
ふたえのまん丸な目をキョロキョロさせながら、みんなは資料作成終わったのかー!?と大きな声で言う彼を見つめた後、窓の外の音に私はビクッとしてしまった。
窓を叩きつける勢いの雨が降っていたのだ。
そっか…、一昨日から梅雨入りしたもんね。
私は静かに溜息をついた後、自分の分の作業が終わったことを確認して、パソコンの電源を切った。
そして、お疲れ様でしたと言って部署を出ようとした時だった。
やらかした同僚が、大雨の中帰るのも大変だし、手伝ってもらったお礼もしたいから、みんなで飲みに行かないか?と拝むポーズをしている。
正直なところ、今すぐ帰ってゆっくりとお湯に浸かりたいんだけどなぁ…。
私以外のみんなは二つ返事の行く気満々で、もちろん海翔も『行く行く!』と手を挙げている。
どうしようと渋る私に、一緒に行きましょうよと皆が誘ってくれる。
すると、不意に海翔に手首を掴まれた。
「はいはいーい!雪奈もいきまーす!」
そう言って彼は、ニッと私に悪戯っぽく笑った。
そんな感じで、残業を頑張った私たちは大雨が降る中、会社のすぐ近くにある居酒屋へと駆け込んだのだった。
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