片思いしていた草食系推しくんと同窓会で再会した結果

・作

新堂 真子(しんどう まこ)は、草食系推しくんこと柊 綾人(ひいらぎ あやと)に高校からずっと片思いをしていた。高校の同窓会が最後のチャンスだと思い話をしようとするが、なかなか話せない。諦めていた矢先、柊くんから声をかけられて…!?

今日は高校の同窓会。

私は地元を離れ、進学をきっかけに別の都市にいた。

そのため疎遠になっていた友人に沢山会えたし、お酒も入って楽しい時間を過ごしていた。

「ねえ、そういや真子は彼氏とかいないの?」

「え?」

「え?じゃないよ!そっちの大学マンモス校だし、ミスターA大の男の子とかいっぱいいるでしょ?」

地元の友人である美耶(みや)は、とてもいい子ではあるが少し色恋沙汰が好きなタイプだ。

お酒も入るとめんどくさくなるな…なんて本人には言えないけど。

「や、それは…」

「え?新堂さん彼氏いるの!?」

「マジ?」

「今問い詰めてんの!だってこのSNSの写真みてみ?」

「だから…」

隣のテーブルで呑んでた男どもにまで話が伝染した。美耶は派手だし性格も明るいから、男女分け隔てなく友達がいる。

収集つかないなこれ…と酔っぱらいを見渡して思っていると。

「あ…」

人がいっぱいいる中で、目が合った。

けれど、彼はすぐ他の人との談笑を再開した。

(覚えて、いるのかなあ…)

そう、私は彼に会うために同窓会に来たといっても過言ではないのだ。

*****

少し過去のことを思い出した。

高校の卒業式が終わり、春休みになった。

私と柊くんは二人で遊びに行っていた。

柊くんは、私の”推し”だった。

国公立受験クラスでしかも文系。私の学校は少なかったので、自然と仲が良くなった。

その中でも、柊くんは私の特別だった。

サラサラの黒髪に眼鏡。一見目立つタイプではないけれど、眼鏡の奥の二重の目がとても綺麗なのを私は知っている。

もちろん頭も良くて、偏差値70ぐらいのすごい大学に行く…はずだった。

「今日は来てくれてありがとう」

「ううん、こちらこそ。楽しかったよ」

スレてない所も柊くんの魅力だ。

「ええっと、柊くんは4月からどこにいくの?」

デートも終わりかけ。最後かもしれないから、聞きにくいけれど聞くしかない。

「あー…」

目に見えて分かるぐらい、困っている。

「じ、実はさ!」

沈黙を埋めるため、私は矢継ぎ早に話す。

「私、第一志望のとこ落ちて、私立に行くんだよね!A大なんだけど」

憧れだった所ではないが、十分満足だった。

「柊くんは私なんかより頭いいし、もっと」

「落ちたよ」

「え…?」

「滑り止めも受けてたんだけど、落ちた」

あまりのことに何も言えなくなった。

どうしていいか分からず涙目になる私に、柊くんは無理した笑みを浮かべて話す。

「だから、今年もう一回頑張ってみることにしたんだ。親には怒られたけど」

「…」

「春休みの最後に楽しい思い出ができたよ、ありがとう。また頑張らなきゃだ」

私よりも絶対に柊くんの方が苦しいのに、なんて言っていいのかわからない。

「新堂さんは、A大に行っても頑張ってね。きっと大丈夫だよ」

結局この日以降疎遠になってしまった。

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