喰い付くケダモノ。 (Page 5)
*****
目を開くとそこには子供のように随分あどけないユウの寝顔が目の前にあった。
行為時に大分汗もかいたはずだし、互いの体液でドロドロだったはずだけれど、その痕跡は一切身体から消えていて、アキが眠っていた間にユウが清拭してくれたのだということがわかる。
そっと手を伸ばしてごわごわと逆立った短い髪を撫でるが、一度眠ったら滅多なことでは目覚めることの無いユウが目覚めることはない。
――昨日はアキの会社で懇親会という名の飲み会があった。
その会場が、合コン会場によく使われるようなおしゃれな店で、しかも今年入ってきた新入社員が前シーズンに国民的ドラマとして流行った恋愛ドラマのヒーローの俳優だった。
…と、いうのを、SNSで見て知ったらしいユウに呼び出されて来てみればこの有様だ。
「…あたしは、ユウにぃ以外の男の人と二人っきりになったことすら無いのにね」
いつも年上の余裕を醸そうとして、ドSのふりをして、こうして余裕が無いことを見透かされている可哀想で可愛いユウにぃ。
「…しょうがないおとこ」
満更でもなく、むしろ楽しげに呟き、アキはもう一度ゆっくりと目を閉じた。
Fin.
レビューを書く