喰い付くケダモノ。 (Page 2)

「…べつに。怒ってねえ」
 アキの言葉にすん、と表情を消してユウが今しがたまでこちらの瞳を覗き込んでいた瞳を逸らした。

 ――嘘だ。八つ当たりするくらいめちゃくちゃ不機嫌なくせに。

 ここまでわかりやすいのに、本人はいっぱしのポーカーフェイスを気取っている所が、ユウのおかしな所だった。

「…ただ、」
「何よ」
「てめぇが一丁前に色気づいて調子に乗ってるからちょっと仕置をしてやろうと思っただけだ」
「…。ユウにぃにお仕置きされる要因なんて何一つ無いんだけど」

 

*****

 ヴヴヴヴヴヴ。

 低く唸る無機質な機械音は暖かなオレンジ色の間接照明に照らされて蜂蜜色に蕩けた寝室の空気にはあまりにも不穏だった。

「ぅあっ…ひあぁああ、あっ…っ!んはぁああっ、ンへっ…、はっ、は、はぁああっ…だめ、だめだめだめ、もぉやめ、それとめてっ、やだやだっ…」

 そんな恐ろしい音を鳴らす震える電マを股ぐらにあてがわれてもうどれくらいの時間が経ったのだろうか。

 「仕置」というユウの言葉通り、それはまさに責め苦であり、いつまでも終わらない刺激の波に気が狂いそうだ。痛みではなく、苦しいほどの性感の暴力を受けている間は、力での暴力を受けている時と同じくアキの時間感覚を狂わせていた。
 
 丸いシリコン製の先端を肉芽にあてがわれてもうどれくらいの時間が経っているのだろう。直接肌に当てられている訳ではなく、下着一枚を噛ませた、ほんの少しだけ柔らかくさせられた振動に、強制的に勃起させられた陰核がじんじんと痺れている。

「やあぁぁああ、も、やだあぁああっ、いたいっ、いたいからっ!もお痛くなってるっ!ユウにぃっ、それ離してっ、もおやだぁああっ…ふぎっ♡♡」

 振動を与えられすぎて熱と痛みを孕んだ陰部の下の方――膣口のあたりが、またじゅんと熱湯に浸されたように熱くなる。それが、その奥から溢れた大量の淫蜜による熱だと、冷静になれないアキが気づけるはずもなく、ただ蕩けるような熱にうかされた声をあげた。

「はは、よく言うぜ。こんなべっちょべちょに濡らしてるくせに。エロガキ」

 先程外したネクタイで器用にアキの両手首を頭の上で拘束して自由を奪い、電マをあてがうだけというコスパの良い拷問をするユウは悪びれもせずアキの反応を見て漫然と笑みを浮かべている。

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