花言葉のメッセージ。本能のままに求め絡み合う、甘く濃密な雨の夜。

・作

どしゃぶりの雨の中、雨宿りをしている時に偶然出会ったのは行きつけの花屋のイケメンお兄さん。「貴女の欲求不満、僕が満たしてあげましょうか?」花言葉に隠された意味を知って…ただの雨宿りが一変、雨の夜の甘いひととき。

『最悪…』

さっきまでの綺麗な星空が嘘のように、灰色の雲が空一面を覆い、雷鳴の轟きと共に突然降り出した大粒の激しい雨。

『傘、持ってきてないし…』

シャッターの閉まり切った夜の商店街で、わずかな軒下へと避難し、空の景色を伺っていた。

傘を持たずに出掛けた私はすでに全身びしょ濡れだ。

秋の冷たい雨は容赦なく体温を奪っていく。

「あれ?美月さん?」

『えっと…』

どこか見覚えがある顔…。

「ほら、いつも花を買いに来てくれる、そこのアルバイトの涼です」

『あ!!ごめんなさい、まさかこんな所で会うと思ってなくて…』

「気にしないでください。それよりこの雨まだしばらく続くそうですけど、家はお近くですか?」

『まだ少し遠くて…』

「僕の家すぐそこなので、よかったら雨宿りしていってください」

『いや、でも…』

彼のことは知っている。

行きつけの花屋の店員さんだ。

でも、深い関係でもないし、少し躊躇ってしまう。

「遠慮しないでください。それに…僕、美月さんにその格好で帰ってほしくないです」

彼の言葉に視線を落とせば、雨で濡れたブラウスが肌に密着し、下着が透けていた。

『…あ…』

気まずくなって、精一杯、両腕で体を覆い隠す。

「大丈夫です。美月さんが嫌がるようなこと、しませんから」

『じゃあ…お言葉に甘えてもいい?』

「もちろん!こっちです。少し走れますか?」

彼に手を引かれながら雨の中を駆けていく。

彼の男らしい後ろ姿に、不覚にも、私の心はときめいた。

「狭いですけど、どうぞ」

案内された綺麗に片付いたワンルーム。

貸してもらったバスタオルに身を包み、出してもらったホットミルクで冷えた身体を温める。

「普段誰も入れなくて、味気ない部屋でごめんなさい」

『そんな!すごく綺麗にしてるし』

「そういえば、こないだの花、咲きましたか?」

『綺麗に咲いて、すぐ散ってしまったけど…』

「月下美人。美しくて、香りもよくて…でもたった一晩で散ってしまう儚い神秘的な花』

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