僕のすべてを、あなたに注ぐ (Page 4)
姉さんは本当は、シンプルな服が好きだ。
ずっと一緒に育ってきたんだからわかる。
けど、大学進学で姉さんが家を出て行って。
だから、頑張って同じ大学を受けた。
合格し、ルームシェアし始めて…気づいた。
姉さんの趣味じゃない服があふれてることに。
問い詰めると去年バイト先で出会ったという、彼氏の趣味だという。
…彼氏? そんなの、知らない。
姉さんは僕のだ。僕の姉さんだ。
僕だけの…椿だ。
「…あれだけ酔っても、彼氏は送ってくれないんだね」
思わず嫌味が出る。
あいつ…諒一のことは知ってる。
姉さんのバイト先まで行って、後をつけた。
何度も。そのたび、別の女と一緒にいた。
…あんなの、姉さんに相応しくない。
「諒一…さんは、他にもバイト掛け持ちしてるから忙しいんだよ」
なのに、姉さんを抱く時間はあるわけだ。
しかも、中出しはしっかりして。
つくづく、ロクな男じゃない。
もっとも僕も、人のことを言えないが。
「蓮が諒一さんのこと悪くいうの…イヤだな」
「…ごめん」
とりあえず謝る。姉さんを怒らせたくはない。
「うん。…ところで蓮、シャワー使うかな?」
姉さんがもじもじしながら言う。
「もう使ったよ。姉さん、どうぞ」
「あ、ありがと。その、お酒を抜きたくて」
姉さんが説明してくる。聞いてもないのに。
「僕はそろそろ行くよ。一限目取ってあるし。スープ作ってあるから、回復したら食べて」
「いつもありがと。優しい弟で、お姉ちゃん幸せだよ」
「…そうでもないよ」
「え?」
「なんでもない。行ってきます、姉さん」
「はい。行ってらっしゃい、弟くん」
*****
姉さんはバスルームに向かい、僕も支度する。
シャワーの音が聞こえてきた。
きっと今頃、ナカの精液を洗い出している。
姉さんにとっては、あいつの。
僕に犯されて出されたなんて、思いもしない。
いつか、気づくときが来るだろうか。
もし姉さんが妊娠したら…どちらの子だろう。
産まないと、血液型はわからないんだっけ?
あいつの血液型は知らない。聞く気もない。
けれどもし、姉さんがその子を産んで。
それが…僕の子だったら。
姉さんは僕を恨むだろうか。憎むだろうか。
…恨んでほしい。憎んでほしい。
どんな感情でも…僕だけを、思ってほしい。
そうしたら僕は、姉さんの中にいられる。
体だけじゃなく、一生、姉さんの心の中に。
一生。僕は、姉さんを。
家を出るため、バスルームの前を通り過ぎた。
そして。
「好きだよ椿。愛してる。姉さん。一生、ね」
僕はそう、呟いた。
Fin.
すごい
りな さん 2023年10月21日