僕のすべてを、あなたに注ぐ (Page 3)

「椿」

イッた直後で、ぼんやりしてる椿にキスした。

軽く、触れるだけのキスを。

キスに気づくと、椿が僕を見て笑ってくれた。

…胸が温かくなる。わき上がるのは、嬉しさ。

さっきの嫉妬とは違う。ただ、椿が愛しい。

「好きだ。ずっと昔から、僕は…さんだけを」

うなずくと椿は目を閉じ…寝息を立て始めた。

…聞こえただろうか。僕の、最後の言葉は。

脱がしかけだった椿の服や、乱れたベッド。

こぼれ落ちた精液。出来る限り、跡を消す。

ナカに残ってる精液は、どうしようもない。

あいつのものと勘違いするだろう。

相手が僕だなんて、思いもしないはずだ。

彼氏よりも近くいる、僕が相手だなんて。

「…おやすみ。椿、ね…さん」

言い残し、僕は部屋を出た

*****

「ああ、おはよう。椿姉さん」

「…おはよ、蓮。その…ごめんね」

椿…姉さんが起きてくるなり、僕に謝った。

「ごめんって、何が」

「…また酔いつぶれて、帰って来たなって」

「酒を覚えて何年も経ってないし、強くなくて当然だろ。でももう少し気を付けないと」

「何に?」

「可愛い女の子が酔いつぶれてたら、悪い狼に食べられるよ」

「も、もう。お姉ちゃんをからかって…そういうのは、彼女にいってあげたら?」

「いないよ。彼女なんて」

「なんで? 蓮カッコいいし、モテるのに」

「興味ないし」

そうだ。女の子なんて興味ない。

椿姉さん以外は、誰も、どうでもいい。

「姉さん。今日、講義は?」

「アタマ痛いし、今日は休講…」

「知らないよ。来年僕と同じ学年になっても」

「なによお。弟のクセに」

ぷうっと、姉さんがほっぺをふくらませた。

…こんな顔を知ってるのは僕だけでいい。

同性の友人はともかく、あいつは、彼氏には。

こんな可愛い顔、見せなくていい。

「…姉さんさ、昨夜はデートだったんじゃ?」

「なんで知ってるの」

「あんなフリフリで、バイトなわけないだろ」

公開日:

感想・レビュー

3件のレビュー

僕のすべてを、あなたに注ぐのレビュー一覧

  • すごい

    1

    りな さん 2023年10月21日

  • めっちゃリアル感あって良い!

    1

    りな さん 2023年10月21日

  • 男性視点が少ない中、とても良かったです!切ないけど、濃厚でした。

    2

    M さん 2023年10月23日

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