女性をイカせるための機械開発
カナは機械工学のゼミ所属の大学生。クールな彼女は、先輩のマナブが作ったアダルトグッズを勧められ、知的好奇心からそのグッズを持ち帰る。今まで性に無頓着だったカナは、振動するバイブに夢中になる。今まで大人のおもちゃであるバイブを知らないからこそ、その振動の虜になっていく。
「女性をイカせる機械を作ってみたんだよ、カナちゃん」
「は?何を言ってるんですか?馬鹿なんですか?」
研究室で、カナはマナブの発言をいつものようにぶったぎる。本当、いつも通りだ。
馬鹿な発言をしたのは、カナが所属するゼミの研究室の先輩、轟マナブ。艶やかな黒髪で、中性的な美貌を持つ美男のくせに、後輩に変な思いつきを語る残念な先輩だ。
カナは眼鏡をかけた冷たい目で彼を睨むが、彼は首を横に振る。演技かかったように「いやいやいや!」と口に出しながら。
「バカじゃないよカナちゃん!大真面目!だってさ、世の中の性産業は男性が主体だと思わないかい?ダッチワイフしかり、男性向けの性風俗!俺はフェミニストとして、よくないと思っているんだよ!」
「本当のフェミニストに土下座したほうがいいと思いますよ。普通、フェミニストは後輩にセクハラしないと思います」
「カナちゃんは知らないのかい?女性の性産業は遅れすぎているんだよ。女性がイクためのローターなんてさ、顔面マッサージ機として売られてたのが近世の話だ。男性向けのものはちゃんとそれ専用として売られていたのに!」
「本当、人の話聞かない人ですね。耳ついてます?」
カナはいつものように言い放つ。
「大体、この機械工学のゼミで何言ってるんですか?AI付きのマッサージ機でも開発しようとしてるんですかね?」
そう、ここは機械工学の研究室だ。マナブは今まで大学院生として優秀に機械を製作してきた。その彼が、今度は何を作ろうというのか。
「違うよ!俺が作ったのは、女性がオーガニズムを感じるための機械だ!」
「本当、馬鹿なんですか」
「カナちゃん!カナちゃんが持ち運べるようなサイズにしたんだよ!」
マナブが差し出してきたものを見て、カナはびっくりした。たしかに、手のひらにおさまるコンパクトサイズ。通常のバイブなどよりも小さなものに、カナは知的好奇心をくすぐられた。
「どうして、こんなに小さいんですか?それに、軽い」
「ふふっ、女性でも扱いやすくする上では軽量化は当然だ。どうか使ってみてくれまいか」
「これ…」
カナは途中まで言いかけ、やめた。
このおもちゃは、バイブなのか。女性のどこに装着するものなのか。知的好奇心が溢れ始めたが、カナはさすがに異性のマナブに話せなかった。
「別に使わなくたっていい。システムだけ見てよ」
「使うわけがないじゃないですか」
カナははっきりと言い返す。しかし、カナは自分の知識として、彼の作ったものがどう動くのか知りたい。
(使うわけが、ない)
カナはつい唾液を呑み込んだ。それは性欲ではなく、実験的な興味である。尊敬するマナブが、市販のアダルトグッズとどう違うものを作り出したのか。
知的好奇心がくすぐられないはずが、ない。
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