私はビッチ
ひとりでフラっとバーに飲みに行き男から声を掛けられるのを待って、その場限りのセックスをする。今夜、声を掛けてきた男は両親の顧問弁護士で、ある”取引”をしホテルへ行った。でも、虚しさが心に荒波を立てバーに戻ると、バーテンから「虚しくないですか?」って。こんな私のことをバーテンの雅也はずっと見てくれてたんだ。
今夜もひとり、バーでナンパされるのを待つ。
「奢らせてください」
「ひとりで飲んでるの?」
「彼氏と待ち合わせ?」
男たちが話す会社の話、自慢話に相づちを打ち、私は酒を飲まされ、ラブホテルへ連れ込まれる。
「あぁっ、すごいぃ、イクぅん、あぁっ、あぁああ…」
「うっ、そんな動いたら…うぅっ、サツキちゃん…」
私はいつも男たちの上になって、勝手にイク。
絶対、名前を呼ばない。
なんでかって?
一番気持ちいいときに、名前間違えちゃって萎えられたら嫌だもん。
ひとしきりセックスして男が寝てる間に、私はホテルを出る。
相手が酔っ払いセックスが中途半端に終わったときは、部屋を抜け出し別のバーで男を探す。
え?お金?もらってないよ?
男で空いた穴を、色んな男に埋めてもらっているだけ。
「こんばんは」
「こんばんは(ふーん、弁護士なんだ)」
「なにか美味い酒、教えてもらえませんか?」
「バーテンさんに聞いたらどうですか?」
「あなたに教えてもらいたいな」
隣の男は優しく微笑みながら、私を値踏みしている。
嫌なヤツ…。
「私じゃなくてもいいでしょ?」
「あなたじゃないと、だめなんです」
色気はあるけど、苦手なタイプ…っていうか、嫌い。
「このスコッチ美味しいですよ」
バーテンを呼んで、この方に同じの、と頼んで、グラスに残っているスコッチを飲み干した。
「帰るんですか?」
他のバーに行こうとカウンターに置いた手を、ぎゅっと握られた。
「私は、あなたと話したいんです」
スーツのジャケットから名刺を出した。
「建設会社の中津社長をご存じですよね?」
…どうしよ、身体が小さく震えだした。
「やっと見つけましたよ。中津サツキさん」
バーテンが、隣の石本弁護士にスコッチを持ってきた。
「うん、美味い。どこのスコッチ…」
「…父の話ってなんです?」
いたずらっぽく微笑んでいる顔が、イライラする。
「ストレートに言うと、戻って来い、と。クライアントであるお父様には言えませんが、私は反対です」
反対ですって言った?私の幻聴じゃないよね?
私が抱える誰も知らないはずの傷を、石本は嗅ぎ付けたんだ…。
「戻るつもりはないです」
「金の力で戻してこいって言われました…お父様すごい執着心ですね」
「父の弁護士さん、なんですか?」
「いいえ。お母さまです」
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