私の執事は私の犬で、私の大好きな人 (Page 4)
「んーっ…! …ぅ…」
全部飲もうと思ったけど、口に広がる初めての味やどろりとした食感、その熱い感覚に驚き、ほとんど外にだしてしまった。
「あっ…ごめ、なさい…拓己」
思わず謝ってしまって、拓己を見上げると。
「…桜子、様」
引き起こされ、拓己の脚の上に乗せられて…キスされた。まだ口の中も唇も、精液で犯されているのに。
合わせた唇の間から、唾液と精液が零れ落ちる。くちゅくちゅと舌を絡める水音に、頭がしびれる。
…これはどっちの音かしら。拓己の? それとも私の?
どっちでもいいと、思い直す。あなたは私のもので、私はあなたのものなんだから。
──ああ。このまま本当に、溶け合ってしまえばいいのに。
*****
ぼんやりしていた意識が覚醒してきた。気づくとソファに横たえられていた。体には、拓己のタキシードのジャケットがかかっている。
手や顔や口まわりや、ドレスに零れ落ちた精液などは拭き清められていた。
横になったまま、そっと薄目を開けて拓己を見る。いつもの顔で絨毯などを拭いている。
随分平然としているじゃない。さっきはあんな、その、…私の口でイッたくせに。
「ああ。お目覚めですか」
テーブルの上に、いつの間にか用意してたらしい。ワインクーラーからミネラルウォーターを取り出し、グラスに注ぐと「どうぞ」と差し出してきた。
体を起こし、受け取って飲み干す。
「…ありがと」
そういってグラスを返すと「いえ。大丈夫ですか? お嬢様」と、拓己は気づかわしげに私を見た。
…お嬢様、ね。そういえばキスされたときも、様付けで呼ばれたような。
そう考えると、その前の…口に出されたときのことも思い出した。
「桜子」
そうだ。確かにそういって、拓己は射精したのだった。思わず顔が熱くなり、頬に手を当てる。
「どうかしましたか?」
「な、なんでもないわよ! それよりその、…満足したかしら?」
顔を覗き込まれ、慌てて取り繕う。すると拓己は、少しだけ顔を赤くした。
「…はい。ものすごく」
「…で…」顔が緩むのを抑えきれず「でしょう!!」と、叫んでしまった。
「俺…いえ自分がいうのもなんですが。その物言いは少々はしたないですよ? お嬢様」
「うるさいわね。私に意見する気? この犬」
「ええ、自分はお嬢様の犬ですよ? ですが…だからこそ、主人から与えられっぱなしはどうかと。自分が差し上げられるものなんて、大したものじゃありませんが。何かほしいものは? お嬢様」
その言葉に、まじまじ拓己の顔を見てしまった。拓己はバカなのかしら。
私がほしいものなんてひとつしかないし、くれるのはあなただけなのに。
「…内緒よ。自分で考えなさいな。犬なら主人の心なんて、わかってしかるべきよ」
そういうと、拓己はちょっと困ったような顔で「はい」と笑った。
そう。それまでは私の全部もあげない。いってなんかやらない。
心の中だけで、そっと呟く。
──私があなたを、大好きかなんて。
Fin.
レビューを書く