1番気持ちいい四十八手の体位

・作

歴史学を学ぶ大学生のリコは、恋人でありバイト先の店長に、四十八手で1番気持ちいい体位のセックスをしようと提案する。しかし自分がセックスをコントロールするつもりが、リコは彼に翻弄されていく――。

「いっちばん気持ちいい四十八手ってなんでしょー?店長」

和田リコは、彼の脚の間に体育座りしながら言った。リコはソファーに座る彼氏の脚の間にすっぽりとおさまる形で、26インチのテレビモニターでゲームをしていた。3Dグラフィックが動く戦国RPGゲームを見ていたが、彼の返事がないのでリコは彼のほうを振り返る。

「何だよ人ン家でゲームしながら」
「店長だってゲームしてんじゃないすか。スマホで」
「お前が勝手にゲーム機持ってきてやり始めるからだろ」

彼は、リコのバイト先の店長であり、リコの恋人でもある。20代半ば過ぎで個人経営の珈琲店を営んでおり、リコはおしゃれな彼の店でたった1人のバイトだ。リコが一方的に彼を好きになり、猛アプローチをした末に、彼と付き合うことができた。
今や、彼の家の合鍵を持ち、普通にゲームをするくらいの関係になった。

「なんだよ、四十八手?」

電子タバコの水蒸気を吐きながら、店長はけだるげに言った。銀色のスマホを彼が黒い革のソファに置いたので、リコもゲームのコントローラーを緑色の絨毯に置く。彼は話をする時、必ず話に専念してくれようとするのだ。

「48個の体位だっけか?お前の大学の授業とかでやってたとか?まさか歴史学ってそんなエロいこと教えんのかよ」
「ふふっ、風俗史も立派な学問っすよ店長。四十八手は浮世絵の絵師も描いていました。江戸の新婚夫婦は四十八手を試しまくって体つっちゃったって話もあるそうですよ」
「へ、へぇ…」

ぺらぺらと話し始めるリコに、彼は少し苦々しい顔をする。リコは歴史学を大学で学んでおり、来年は歴史博物館の学芸員に就職が決まっている。
つまり、2人で珈琲店で働くのはあと少し。社会人になったら、リコも少しはバタついて彼の家に来る頻度は少なくなるだろう。

「で?大学で気持ちいい体位が何だって習ったんだ?炬燵がくれとかか?」
「あれ店長、体位の名前知ってるんですね。いや、大学ではそこまでディープな話にはなってないっす。どれかなぁって、あたしも気になってまして」

ここからが、本題。リコは目を輝かせたし、わかってくれた彼は気だるげに電子タバコの水蒸気を吐くのだ。タバコの煙と違って、電子タバコの匂いはアロマのようにフローラルで、リコも嫌いではない。

「試したいのか」
「はい、試しましょーよ。あたし的には目星つけてて」
「俺、体硬いから変な体勢のは無理だからな」
「大丈夫でっす。そんな変なことしないですから」

リコは彼の膝の上に顔をのせ、彼の太ももに手を置く。恋人同士のリコと彼は2年の付き合いになる。もう何十回としてきた行為だが、リコは性欲が旺盛な分、足りない。

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