淑やかな妻が、初めて積極的になった夜

・作

結婚して3年。そろそろ子どもを、と考えて妊活を始めた政樹と芽依。年の差はあれど仲の良い2人だが、性生活は交際当初から淡白で。加えて芽依は大人しい性格で、いつも誘うのは政樹からだった。けれども今夜は、恥ずかしそうにしながらも芽依から声を掛けて…

12歳下の妻・芽依とは3年前、彼女の大学卒業と同時に結婚した。出会いは夜のとある店…といっても如何わしい場所ではなく、小さなスペースで猫との触れ合いを楽しめる『猫カフェ』だった。たまたま来店時間が重なることが続き、少しずつ会話をするようになった僕たちは交際をスタート。猫が好きという共通点以外にも、お互い写真が趣味ということで意気投合し、約1年半の交際を経てゴールインを果たし今に至る。

「政樹さん…あの…」

妻は出会った当初から物静かな女性で、強く主張したり我を通したり、声を荒らげて怒ったりしたところは見たことがない。小柄で華奢、黒髪で色白。ぱっと目をひく美人ではないが、清楚で愛らしく、そろそろオジサンに片足を突っ込んでいる僕からすれば可愛いくて仕方がない存在だった。

「どうした?」
「今日はもう…寝ちゃい、ますよね?」
「まだ別にすぐには…何かあった?」
「あ、あの…したいな、って…」

芽依とは最近になって、妊活を始めた。結婚当初は彼女も仕事を始めたばかりだったし、猫を飼い始めたのもあって、子どもはもう少し先でということでと決めていた僕ら。昨年転職して僕が在宅ワーカーになり、芽依も仕事に十分慣れてきたし…ということで、避妊をやめたわけだが。

「疲れているなら、大丈夫です。明日も、お仕事あるだろうし…その、先週末も…したし」
「芽依からの誘いなら、断るわけないよ」

こうやって夜の誘いを芽依からしてくれるのは、実は今日が初めてのこと。僕から誘って断られたことは基本的にないが、一般的な夫婦と比較すれば性に淡白なこともあって、交際中は元より新婚の頃から頻度はそれほど高くなかった。

「自分から言うの、恥ずかしくて…あの、えっと…」
「積極的な芽依も僕は大好きだから、安心して」

そう言って、芽依の手をひいてベッドルームへと向かう。もう何度も体を重ねているというのに、行為前の芽依はいつも恥じらいがあって初心(うぶ)で、男として堪らなくなる。加えて、童顔な彼女はパジャマを着ているときなどは10代の女の子にも見えるため、れっきとした夫婦だというのに何だかイケナイことをしている気分にもなった。

「ンッ、ぁ…」

瑞々しい柔肌に手を這わせ、その小さな唇を割って甘い舌を堪能する。芽依とは、あまり淫らなキスをしない。僕たちの触れ合いは優しく穏やかで、ともすれば幼くもある。セックス自体も至ってノーマルで、流れもだいたいいつも同じだった。

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