偶然の出会いから始まる、名前も知らない年下アイドルとお風呂場で秘密の…♡ (Page 2)
隠した顔の間からちらっと目だけを覗かせる彼。
「え?」
「このこと言わないでください!俺、ナンパしてたなんてSNSに書かれたら…コンサートだって控えてるのに…」
困り顔、というか半分泣き顔でなぜかすがりついてくる彼。
え?なんで??
何だか勘違いされてるみたいだし、事情はよく知らないけど…。この感じは彼はどこかのアイドルをやってるんだろう。
でも全然知らない子だな…。
まさか、この電柱の広告に出演してたりして?
「コンサートって、これのこと?」
広告を指差すと、彼は雷に打たれたような顔に。
「あ…そうなんですけど…!」
彼は目を右往左往させて、それから何かを決心したかのようにすくっと立ち上がった。
「お姉さん、この事絶対秘密にしてください。その代わり今お姉さんのこと、俺がちゃんと助けるんで!」
そう言うと彼は、戸惑う私を抱え出した。
「えっ、ちょっと、何?」
「騒がないで。足、ちょっと治療するだけなんで。俺の家近いからそこで。ほんと治療だけなんで!」
彼は小声かつ早口で私の耳元で囁く。
こんな漫画みたいなシチュエーションに胸が高鳴っていくのを感じた。
「うん…。治療、お願いします」
困っている時の嬉しい助けとはいえ、こんなのいいんだろうか?
私は少しの不安と、それからどうしようもない期待を感じていた。
「到着です。足、今すぐ治療しますね」
徒歩3分くらいで彼の家に到着。中の部屋に通され、ソファに優しく下ろされた。
「ありがとう。本当にごめんね」
「いえいえ。これくらいお礼を言われるまでもないですから!」
人目が無い自分の家だからか、さっきとは打って変わって明るくなる彼。
私はその様子に少し可愛いと思いながら、自分の足を改めて見た。
(うわ…今日パンプス1日中履いてたし、足の匂いやばいかも…)
治療してくれるという彼の手前、汚い足をさらけ出したくない。もう手遅れかもしれないけど。
私のわずかばかりの乙女心が揺れて、彼に声をかけた。
「あの、シャワーとか借りてもいいかな?足がちょっと…」
最後まで言うのは恥ずかしくてゴニョゴニョしていると。
「あ!そうだね!まずは水で洗い流さないと薬付けられないか」
良い方向?に勘違いしたようで、私はお風呂に案内された。
全部良かったですね❗️選べません
鈴木多美子 さん 2022年7月19日