悪魔の体液は禁断の蜜~異種婚の2人の初夜~
会ったこともない魔界の王子様に見染められて、結婚が決まったウテナ。執事のルーと魔界に足を踏み入れたけれども、王子様の出迎えはなくて…。「悪魔の体液は禁断の蜜」って本当!?異種婚の2人の甘い初夜をどうぞ。
長年続いた異種族同士の争いを収めるために、王族同士による異種婚が定められたのは300年も前の話。
エルフにドワーフ、オークや人狼…。
色んな種族との交わりが深くなったけれども、魔界に嫁いだ人間の姫はいない。
…300年1人もいなかったのに。
「王子様に嫁ぐ」って言えば聞こえは良いけど。
赤い月が昇るという異世界。
「どうして私が…」
何度目か分からないため息をついても仕方ないけど。
「見染められた」
なんて言葉ひとつで、見たこともない魔界の王子様に嫁ぐことが決まってしまった。
(話をしたこともないのに、どうして?)
そんな私の心を知る由もなく。
馬車が止まった。
「ウテナ様、到着いたしました」
通されたのは、お城にあった私の部屋をそのまま移した様な懐かしさを感じる部屋。
ベッドの上に真っ白なドレスと美しい薔薇が置かれていた。
「これに着替えろってことかしら?」
お城から一人、私に付いてきてくれた執事のルーが頷いた。
みんなとのお別れはすごく寂しかったけど。
ルーが一緒にいてくれるのは心強かった。
「ルー、ねぇ、似合うかしら?」
「ウテナ様は、何を着ても本当にお似合いになります」
驚くほどピッタリなドレスは、私のためにあつらえたようだった。
「ルー、これから私、どうなるのかしら…」
「空の色以外は、案外変わらないものですよ」
ルーは澄ました顔でいった。
窓の外には深い闇が広がり、大きな赤い月が輝いている。
「案外変わらない…か。そうなのかなぁ」
*****
食事を取りお風呂に入ったら、闇がより深くなっていた。
「ねぇ、ルー?」
「どうなさいましたか?」
「他の方は…どちらにいらっしゃるのかしら?」
使い魔たちは遠巻きに私を見るだけ。
馬車を降りてからルー以外と口をきいてない。
ふかふかのベッドに身を投げ出す。
「そもそも…私、誰と結婚するの?」
ずっと思ってた疑問。
出迎えにも来ない、食事も共にとらない。
そんな人と結婚なんて…しなきゃいけないんだろうか。
「顔も名前も知らない人なんて…」
言いかけた時。
雲ひとつない空から、雷鳴が轟いた。
「ウテナ様…」
「どうしたの?ルー」
振り返ると、ルーの瞳が月の様に赤く燃えている。
「私が。その、相手です」
「えぇっ??」
雷鳴が霞むくらい大きな声が出てしまった。
「魔族は人間に擬態して生活しているんですよ」
鳶色だったはずの瞳は赤く、背中には漆黒の羽根。
「だって、なんで執事に…」
「相手は決まっていたので、どんな方か知りたかったんです」
そう。
私だけではなくルーも相手を選べなかったのは一緒だ。
「でも、でも…」
混乱して言葉が出てこない。
「『見染めた』って確かにお伝えしましたが」
「…聞いたわ!ルーの口から」
確かに言われたけど、「ルーに見染められた」なら最初から言って欲しかったよ…。
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