イケメンホストが私に本気で種付けしてきました (Page 2)
「だからって何でホストクラブなのよ…」
さっき帰る直前に綾子が入れていったシャンパンをちまちま飲みながら、私はブツブツと一人呟く。
あの後いい感じに酔っ払った私達は、三軒目に行こうとした。だけど何を思ったか、綾子が連れてきたのはホストクラブ。
綾子の行きつけだというこの場所に私を一人残し、彼女は上機嫌で去っていった。
「荒療治」だとかいう意味不明なセリフを口にして。
彼女曰く高級店らしいここは、いかにも夜の店といういやらしさはあまりない。どれをとっても一流と分かる拘りの内装と、ガヤガヤしていない落ち着いた雰囲気。
さっきメニューを見たけど、取り扱っているお酒の種類もかなり豊富だった。
さっきから入れ替わり立ち替わりやってくるホスト達も、想像より割と年齢層が高めな気がする。
私の雰囲気に合わせてくれているのか、皆しっとりした大人な対応だ。
ホストクラブってもっと下品な場所かと思ってたけど、そうじゃない店もあるのだと知った。
まぁ、所詮は色恋の駆け引きを生業としている場所。信頼関係なんてあったもんじゃない。
口八丁手八丁で女を騙す、私の嫌いな人種。
とはいえこの人達もプロだし、悪質な営業は許せないが、客だっていい人間ばかりではないだろう。
きちんと自分の役割を心得て対価に見合った働きをするホストは、それなりに評価している。
「アサヒさんって美人だけど、特に目元がいいよね。意思宿ってる感じが」
今日私の隣にやってきたホストの中で、この人が一番私に合っている気がする。
貰った名刺はシンプルで光沢のある黒、そこには筆記体で「ナナセ」とだけ書いてあった。
私は今日誰にも、自分の職業を明かしていない。だけどこのナナセという男だけには、何となく勘づかれているんじゃないかと思わされる。
場の回し方が上手く、笑顔が上品で所作が綺麗。いかにもホストという見た目ではなく、ストライプのスリムスーツを着こなすスラッとした姿は、どこかの御曹司と言われても納得してしまいそうだ。
等身完璧で座ってるだけで絵になるし、ミルクティ色のサラサラの髪がシャンデリアの明かりに照らされてキラキラと光っている。
最初に見たいわゆる「男メニュー」というやつには、ナナセはこの店のナンバー3だと書かれていた。
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