俺がお前を買った

・作

俺はヤクザの若衆をやっている。ある日、部下と行った風俗で好みの顔をしたかわいらしい女、咲(さき)と出会った。俺は女を道具として扱うのは好きではないが、即決で彼女を買い、自分のそばに置いておくことにした。

「おう、お前ら。今日は奢りだ。好きなだけ遊んで来い」

俺は地方のとあるケツモチの風俗にやってきていた。

借金のカタの取り方をどうすればいいか、頭に相談したところ「好きなだけ遊んで来い」と一言言われたからだ。

俺はどちらかといえば、女で遊ぶのは好きなほうではない。

ただし、自分の部下はそうではない。そのため、仕事としてここにやってきていた。

「アニキ、一番の上玉はアニキがどうぞとのことです」

俺は「…ああ」と一言返し、黒服に部屋へと案内されていった。

*****

部屋に案内されて、扉を開くとそこには儚げな女性が一人、座っていた。

目は切れ長で、どこか憂いを帯びた女だった。

一目ぼれ、だった。

「…おい黒服」

「はい、なんでしょう!」

「いくらだ」

「はいい!借金はええとひい、ふう、…」

何を勘違いしたのかみかじめの不足金額を数え始めた男の言葉を遮るように、「こいつがいくらだったら買えるかって聞いてんだよ!」

と俺は思わず声を上げる。

数か月分のみかじめ分の金額を提示されたが、安いもんだった。

「おら、貰っていくぞ。借金のカタにな」

*****

そうして俺はそのまま部下たちが帰ってきた後、車を走らせ自宅に帰る。

自らの部屋に女を連れてきて、一言聞く。

「テメェ、名前なんつぅんだ」

「…咲」

彼女は一つ名前だけ答えると、俺から距離を取り、警戒するような目でこちらを見た。

「…俺はお前が気に入った。だから、お前を買った。それがどうした」

「怖いに、決まってるじゃん。ヤクザって、怖いイメージしかないの…」

「…そうか」

俺は彼女のほうに近寄っていく。彼女は常に怯えていて、こちらを恐怖の対象と言わんばかりの目で見つめる。

俺はそっとかがみ、彼女の頭をなでる。

「お前の人生のこと、ちったぁ聞かせてくれや」

咲は豆鉄砲を食らったかのような顔をすると、少しずつ落ち着き、口を開き始めた。

生まれは普通の家庭で、恋人に騙されて借金のカタにあの場所に売られた。昔の友人がヤクザにめちゃくちゃにされたこと。

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