羊の皮を被ったお兄ちゃんにイケナイところを舐められちゃいました

・作

家庭教師だった宮森准(みやもりじゅん)のことが大好きな日下月子(くさかつきこ)は、彼とえっちしたくて大奮闘。しかし、准には「二十歳になるまで手を出さない」と宣言されていた。このヘタレ!と思っていたけど、成人するなり押し倒されて…「痛くないようにたくさん舐めてあげる」って、そんなトコ舐めないで!

落ち着いた紺色で統一されたリネンに、難しそうな本がたくさん並んだ本棚。そのくせ卓袱台(ちゃぶだい)みたいなレトロなテーブルが置かれている、男の人の部屋。

ここは准ちゃんの部屋だ。

准ちゃんは私の家庭教師をしてくれた知り合いのお兄ちゃんで、家族ぐるみの付き合いがある。

その准ちゃんの部屋で、私は眠る准ちゃんの上に乗っかっていた。

仰向けで寝ている准ちゃんの胸元に手を重ね、その上に顎を乗っける完全リラックスポーズ。至近距離で眺める寝顔に、思わず顔が笑ってしまう。

准ちゃんは昔から一回寝ると、なかなか起きない。なので時々こうしてイタズラをしにくるのだが、乗っかられても起きないってのはまずいと思う。

准ちゃん、ヒゲうすいなー。ほんとに男の人かなー、なんてことを考えながら、准ちゃんのほっぺをぷにぷに突いて遊ぶことしばし。

ようやく准ちゃんの瞼が、うっすらと開いた。

「おはよ、准ちゃん」

「月子ちゃん…」

語尾にハートマークがついて聞こえるようなテンションでにっこり挨拶をすると、呆れたような表情を浮かべていた准ちゃんの顔はみるみるうちに赤くなっていく。

腹這いで乗っかられていることにより、あんまり大きくない私のおっぱいが自分に当たっていることに気づいたのか。それとも自分より先に“起きていた”モノの存在に思い至ったのか。

私としてはどちらでも構わないんだけど。

「ちょっと、どいてくれない…?」

「やだ」

真っ赤になった顔を手で覆った准ちゃんに懇願されるけど、お断り。

それもこれも、いまだに手を出してくれない准ちゃんが悪いのだ。

女の子だって、好きな人に触りたいし触ってほしい。

そのへんを、このヘタレはわかっていないのだ。

*****

准ちゃんと付き合い始めたのは、私が高校生になったときだ。

家庭教師として来てくれていたのは中学校からで、出会ったのは私が物心つく前である。

准ちゃんは私よりも七つも年上で、まさか好きになってもらえるとは思ってなかった。

だから告白したのも、玉砕覚悟というか、つい口が滑った感じだったのだが――

『俺も、月子ちゃんが好き』

真っ赤になって泣きながらそういってくれた彼を見たとき、これはもしかして私が抱くべき?と真剣に悩んだ。

年上男子のくせに可愛すぎるだろ。

泣きながら私の手をそっと握ってきた准ちゃんを見て、発狂しなかった自分を今でも褒めたい。

なにはともあれ、どうにかスタートした私たちのお付き合いだったが、それからはまさに前途多難だった。

それは、親の反対にあったわけでも世間の目が厳しいとかそういうわけでもなく…――

『二十歳になるまで、えっちはしません!』

この、准ちゃんの信念というか決意のせいである。

彼は、どうにも私を大切にしすぎるところがあるのだ。

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