わたしはビッチ

・作

誰とでも関係を持ってしまう私、美波は「ビッチ卒業!」と決意する。しかし、ナンパしてきたのが好みの男性で決意が揺らいでしまう。気さくで面白い彼、太郎に心を許し、車に乗り込むと向かった先は海だった。海の駐車場でキスされて…拒んだ美波だったがその後はいったい…!?

「はぁ…またやっちゃった…」

断れない性格の私は、誘われると付いて行ってしまう。

食事や飲み、ホテルにも行ってしまうのだ。

そして終わると必ず後悔する。

今日も私は自己嫌悪に陥りながら、後悔と反省をしていた。

「なんで私は断れないの?ほんと自分が嫌になる…もう絶対に流されない!ビッチ卒業!」

*****

あれから1週間、男性に誘われても断り続けた私。

「私、やればできるじゃん!」

1週間に1度は誰かとセックスをしていたビッチな私が、こんなに誘いを断り続けるなんて、すごい進歩だと自分を褒める。

このままいけば、本当に変われるかも…!

しかしその思いは脆くも崩れた。

仕事帰りにナンパをされた。

「お姉さん、今暇ですか?」

後ろから声を掛けられたが無視した。

「お姉さん、シカトしないでよ」

私の前に出てくる男性。

「ちょっ、しつこ…ッ!」

男性の顔を見ると私好みの今風イケメンで、カッコよすぎて言葉を失った。

「やっと止まってくれたぁ!お姉さんにシカトされて軽くショックだったわ。お姉さん、仕事帰り?」

「え、あ、うん…」

「これから暇?」

「うん…え?あ、ちがっ…」

「暇ね!じゃあちょっと付き合って!」

「えっ!ちょっと待っ…」

腕をぐいぐい引っ張られ、ケーキ屋さんに入っていく。

「なんでここに…?」

「俺、甘いの好きなんだけど、こういうところって1人じゃ来づらいし、女の人となら自然に入れるでしょ?」

この人はケーキが食べたいために、私をナンパしたの?

おかしくて笑ってしまった。

「プハッ!あなたおもしろいね」

「男がケーキ好きってバカにしたろ!それと俺の名前は太郎!太郎でも太郎ちゃんでも好きに呼んで」

「太郎?それ偽名でしょ」

すると彼は身分証を見せてきた。

正真正銘、太郎だったことにまたしても笑ってしまった。

「おい、笑うなよ!俺はこの名前気に入ってるんだから!」

「ごめん、ごめん。私の周りにいない名前だからさ。私の名前はみなみ、よろしくね」

「みなみ?いい名前だね。漢字はどう書くの?」

「美しいに波で美波だよ。うちの両親、海が好きだったみたい」

「なんかロマンチックだな!俺、弟いるんだけど、次郎って言うんだ」

「ププッ…マジ?太郎に次郎?ごめん、笑いが堪えきれない…!」

「いいよ…好きなだけ笑ってくれよ…」

私はツボに入り、涙が出るほど笑っていた。

こんなに笑ったのは久しぶり。

初対面とは思えないくらい楽しくて、太郎ともっと話したいと心から思った。

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