唇が暴くカラダのウソ

・作

三度目のデートでいい雰囲気になった彼に正直に不感症のことを告白すると、優しく抱きしめられてしまう。だけど翌朝目を覚ました私に彼は激しいクンニをしてきて、そのまま私は絶頂へと導かれてしまう。こんな快感知らない。これがイくってことなの?戸惑う私に彼はさらにとんでもないことを言ってきて…。

マッチングアプリは大成功だった。

新品のブラセットを服の下につけてこの三度目のデートに臨んだ私は、慎二さんの質問をあえて聞き直した。

「え?ごめん、もう一回言ってくれる?」

「だから、この後はどうしようか。どこかで飲み直す?」

「うーん…もう少しお話したいかなぁ」

にっこり笑って首を傾げた私に慎二さんも微笑む。

「分かった。それじゃ少し歩くんだけど、雰囲気のいいお店が近くにあるから行こうか」

そう言って連れて行かれたのは半地下のバー。

年季の入った重たい扉は彼が開けて、薄暗い足元の段差では手を差し出された。

「寒くない?」

「ううん、平気」

ほら。席に着いた後まで気遣いは完璧。

チラッと慎二さんの整った横顔を見上げる。

プロフィール写真で見た時よりもずっとくりくりしている目には緊張もない。

これで彼女がいないとか本当?

どうしても信じられなくてお代わりの勢いに任せてとうとう質問してしまった。

「ねえ、どうしてマッチングアプリを使ったの?」

「どうしてって…彼女が欲しかったから…」

「でもこれだけイケメンだしエスコートもできるし、彼女ができないわけじゃないでしょ?」

「できないよ。…ちょっと前まで俺、すごいモサかったし」

少し照れたように笑う顔は三回目のデートにして初めて見るものだった。

「仕事に没頭してたら身なりとか構わなくなっちゃってね。気がついたら彼女にも…フラれちゃってた」

「え?」

聞き直そうとしてハッとする。目を伏せた彼が少しだけ唇を噛んだのに。

しまった。

「あ、あー…えっとねえ、実は私も同じような感じ。元彼は私に不満があってうまくいかなくって、それで…気がついたら浮気されてたの」

ふふっと笑って肩をすくめる。

「もう、やんなっちゃうよねえ」

「…そうだね」

少し驚いて、それからようやく笑ってくれた。慎二さんの笑顔に安心してモヒートを一口飲み込む。

「ねえねえ、慎二さんがモサかったってどんな感じなの?想像できない」

「うーん、すごかったよ。ずっとモニター見てたせいで猫背になってたし、ほら、俺って癖毛でしょ?髪もブロッコリーみたいにわーってなってた」

思わず吹き出してしまった。

「ブ、ブロッコリーって」

「ホントだよ。癖毛大変なんだから」

「ふうん。私はいいと思うけど?この癖毛。プロフィール見たときに最初に目を惹かれたもん。なんかセクシーだなぁって」

そうかな?と疑わしげに首を捻った慎二さんが突然わしゃわしゃと自分の前髪をかき混ぜた。

ウェーブを描く前髪が少しだけ額に落ちる。

「どう?セクシー?」

わざとキザったらしくしてるけどやっぱり目はくりくりしているものだから、さらに笑ってしまう。

「うーん、まあまあセクシーかもね」

頷いてノった私のカウンターに置いた手に、かすかに触れる慎二さんの指。

避けなかったらそのまま手を重ねられた。

静かに見つめ合って、キスしたのはお互いからだった。

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