今日はセフレ卒業記念日
小池里奈と五十嵐春樹は同じ会社の先輩と後輩。という関係だけではなく、小池が彼氏に振られる度に五十嵐が抱くというセフレ関係でもあった。小池が彼氏に振られて五回目の飲みの日、流石にもうこの関係をやめようと小池は五十嵐に話を切り出す。ところが五十嵐は「オレに飽きた?」と寂し気に言い出し……
「それじゃあ小池ちゃんの五回目の失恋を記念して……かんぱぁ~い」
「嫌な記念ですよ!今日はとことん付き合ってもらいますからね!乾杯!」
ぐい、とジョッキを仰いだ私、小池里奈と先輩の五十嵐春樹さん。
私たちは同じ会社の先輩と後輩という関係だ。
それだけだと普通なんだけど、ちょっとだけ違う関係性がある。
それは、私たちはセフレも兼ねている、というところだ。
もういつが始まりだったか覚えていない。
私が職場の非常階段で彼氏に振られたことに泣いていると、ちょうど仕事をサボっていた五十嵐先輩と出会った。
その時に、五十嵐先輩が言ったのだ。
「じゃあさ、オレが慰めてあげるよ」
自棄になっていた私はその誘いに乗り、その日の夜、先輩に抱かれた。
先輩は顔もよく、コミュニケーション能力も高く、社内でも一定の評価があるし人気者だ。
だけどヤリチンなんだよね、と本人は笑っていたけど、それでも私を一人の女性として扱ってくれて、性処理の付き合いとは感じなかった。
それからは、彼氏に振られた後に先輩と飲みに行って抱かれる、というのがすっかりお決まりコースになっていた。
だけど、流石に五回目となるとなんだか申し訳なくなってくる。
前々からいつかは終わらせないといけないなとは思っていたけど、ここが潮時かもしれない。
先輩がメニューを見ているのをちらりと見て、私は口を開いた。
「あの、先輩……」
「ん?ああ、今日はオレんちでどう?」
「あーいや、そうじゃなくて……」
もう空になったジョッキを置き、私は先輩の目を見ないで言う。
「もう、終わりにしませんか。この関係」
居酒屋のざわめきが、やたらと頭の中に入ってきた。
あちこちで下品な笑い声や、楽し気な話し声が聞こえる。
そんな中で先輩からの返事がないことを不思議に思い、私は俯いていた顔を上げた。
「……オレに飽きた?」
いつも優しく微笑んでくれる先輩が、とても寂しそうな顔をしていて、私が返事に困る。
「えっ、と。いや、五回も付き合ってもらっちゃうと、なんだか申し訳なくなってきて……」
「オレ、迷惑だなんて一回も言ってないでしょ」
「そうですけど、このままじゃ先輩も恋人作れなくないですか?先輩、モテるでしょうし」
「なんでオレがここまで小池ちゃんに付き合ってるか、わかんないの?」
先輩の言っていることが本当にわからなくて、私は頷いた。
「うーん……まあ、そっか。そうだよねえ」
ぐびり、と半分ほど入っていたジョッキを仰いだ先輩は、ふわりと微笑んで言う。
「小池ちゃん。もうオレんちいこ」
先輩に言われるままに、私も席を立ちあがった。
そうして数度目になる先輩の家へ行き、私は抱かれる準備を始める。
まじでめちゃくちゃ最高です…へらへらした男がへらへらしたまま本気になっちゃう感じ、めちゃくちゃいい沼でした。助かります…
いかそめ さん 2020年9月28日