私で練習していいよ?姉に片思いしている彼に提案してみたのはいいんだけど…
姉と彼氏の濃厚なキスの現場を目撃してしまった私とかなめ。かなめはたぶん姉のことが好きなのに…彼を慰めようと姉の秘密の道具を持ち出してきた私は「練習しよう」と提案するものの、かなめが愛おしくてたまらなくなって…
「待ってってば!」
道行く人をかき分けて、私はかなめの後を追いかけている。
元陸上部の私に勝てると思ってるの?!
胸中では息まきながらも、なかなか追いつけない。
とうとう路地を曲がったところで見失ってしまった。
「ったく!あいつ、どこ行きやがった?」
息を切らしながら呟いた。
『うわ、ガラ悪ぅ(笑)』
声が聞こえ振り向くと、ちょうど視界に入っていなかった壁際にもたれ、かなめが笑っていた。
「かなめ!なんで…逃げるのよ!」
『唯奈こそ、なんでそんな必死な顔して追っかけてくるの?なんか、逃げちゃったじゃん(笑)」
犬かよ、と言いたくなったがやめておいた。
元気そうに見えても、さっきのダメージは受けているだろう。
「泣くな、かなめ。人生は長い」
『泣いてねぇよ…気まずかっただけ』
鍋パの終わりにコンビニでアイスを調達してきた私とかなめは、部屋に戻ってお姉ちゃんと彼氏の濃厚なキス現場を目撃してしまった。
かなめはお姉ちゃんのこと、まだ好きなんだ。
かなめに少し恋心を抱いていた私は、その反応に密かに傷ついていた。
なのにこうして追いかけてきたのは、かなめを慰めてあげたかったからだ。
「わかった、私がお姉ちゃんの秘密教えてあげる。今後のために知りたくない?」
『…今後のため?』
「そう!意中の彼女(お姉ちゃん)を落とすため!」
*****
『ラブホ…初めて入った』
「ここ、私のお気に入りなんだ。一人でも泊まれるから時々来るの。お姉ちゃんと二人暮らしでしょ?だから喧嘩したとき来るの」
年に一度くらいだけど、姉とひどい喧嘩になる。
二人暮らしともなると、姉妹とはいえお互いにストレスが溜まるのだ。
『へぇ、思ったより広いんだね?ちょっとわくわくする!』
かなめはベッドでバウンドしたり、冷蔵庫やお風呂場を見て回って楽しんでる。
「こら(笑)はやく座って」
ベッドに腰かけている私の横に座り、かなめはおとなしくなった。
「ちょっと待ってて、用意する」
私はお姉ちゃんの愛用品をバックから取り出した。
「これを使うの」
それは私が数年前にお姉ちゃんのクローゼットからくすねた黒いムチだった。
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