彼氏の浮気現場を尾行していたら、超絶イケメンに口説かれて…
彼氏が浮気している。悲しいけど女の勘は正しかった。どこか諦めがつかなくて現実を受け入れるためにと尾行することを決意した私。案の定、仲よくホテルに入っていく二人を見て、引き返そうとした時、長身の男性に声をかけられる。どうやら私をマッチングの相手と勘違いしているようだ。「ホテルに行きたい」咄嗟に2人の入ったホテルに誘い、尾行は続くのだが…
なんとなく彼氏と目が合わない。
同棲生活がはじまって、こんなことは初めてだった。
ぶっきらぼうで不器用な彼を可愛いと思いはじめて私から好きになった歳上の彼。
やはり部屋へ押しかけてあれこれ世話を焼いてしまったのは失敗だったのかもしれない。
家政婦状態でいつの間にか抱かれることもなくなり、現状打開のためにと私は今夜セクシーなレースの下着を装着していた。
そんな時、もうすぐ彼が帰ってくるという頃にメッセージが入った。
『残業で終電逃しそうだから、今日は帰れないかも』
これって完全に浮気の初期症状、いや末期か?
最近の彼の冷たさ具合を考えると悲しいけど予想できていた展開だった。
もしかすると彼は彼なりに誠実に、私との距離を取ろうとしているのかもしれない。
私は大きくため息をついた。
「…まだ大丈夫。今ならまだ諦められる」
そう口にした途端に、これまでの二人の思い出が脳裏をかすめる。
心の中にあるこの楽しげな思い出が私の後ろ髪を引いていた。
「決定的に女といる姿をこの目に焼き付けて、キッパリすっぱり諦めてやる!」
*****
こうして、ある休日。
彼のスマホを盗み見て、浮気相手との待ち合わせ場所を突き止めた私は、あるホテルの前で立ち往生していた。
数分前、このホテルに二人が仲良く入っていったものの、一人で中に入るのに躊躇していた。
「どうしよう…もう浮気で間違いないよね。彼はもうあの子の事が好き。それだけのことじゃん…」
そう自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
そんな時だった。
「あの、由香さん…ですか?」
振り向くと、長身で黒髪のメガネ男子が立っていた。
「あ、えっと…」
「あの、マッチングの…」
もしかして彼は、誰かと私を勘違いしている?
そして、その相手は顔も知らない相手…
「は、はい!そうです。由香です」
私は咄嗟にそう言っていた。
安心したように彼が笑うとキラキラと後光が差しているかのような華やかさを放った。
「隼斗です。会えて嬉しい…です」
こんなにかっこいい男の子がマッチングアプリ?
そんなことを思いながら、彼に見惚れて思考停止していると、視界の端にキョロキョロと周囲を伺っている女性がいることに気づいた。
もしかして、あれが本物の由香さん?
私は慌てて彼の腕を引いた。
「ここのホテルに入ろう?」
中へ入ると広いロビーが広がっている。
ソファでくつろいでいる客に混ざって、私たちも空いているソファへ座った。
周囲をそっと確認すると見覚えのある二人がまさにエレベーターに乗り込むところだった。
腕を組んでピッタリくっついている二人をこれ以上尾行する必要もないと、私はようやく観念した。
「俺、受付してきますね」
「あ、えっ…」
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