真面目な彼のふしだらな罠

・作

仕事中、真面目で有名な和田さんから連絡先を聞かれて交換した私。ある夜、ふたりでレストランに行くことになって、料理のレシピ動画を送ってもらったら、これって?足先で私の太ももを撫でるんだ、真面目な和田さんって。

仕事であまり話したことがない、真面目で有名な和田さんに声掛けられた。

「村井さん?良かったら、連絡先…教えてもらえないですか?ダメ、ですよね…」

仕事の話かと思ったのに、和田さんが仕事中に連絡先って…。

「大丈夫です。これ…」

プライベートはどんな人なんだろ…って連絡先を教えたら、その夜、

『お疲れさま。今、大丈夫?』

帰宅して、食事を作っているとスマホが鳴った。

『お疲れ様です。食事作ってます』

『良かったら、春奈ちゃんが作った料理の写真送って!』

和田さんが私の下の名前知ってることに、胸がキュンとした。

盛りつけをしていると、和田さんから写真が送られてきた。

魚のマリネ、アボカドがゴロゴロ入っているサラダと、湯気が映っているスープ。

『僕の今日の夕飯』

仕事をしている和田さんのイメージから、この料理は意外。

他にも意外だったのは、砕けた言葉の文章、絵文字、そしてキャンプしてるアイコン写真。

私と和田さんは、同じ日の同じ時間、配信サービスで映画を観ようと約束するほど、距離は縮まった。

翌日、職場で和田さんは後輩と話しながら、前から歩いて来た。

すれ違ったとき私と目が合うと、和田さんは微笑んだ。

私は、和田さんの笑顔に見とれ、人にぶつかり書類を落とした。

その日私は、集中力を欠いて仕事でミスを連発し、帰りに高級スーパーに行って散財しようと決めた。

「あれ?春奈さん」

「和田さん…お疲れさまです」

高級スーパーのオイルの棚で、買い物かごを持っている和田さんに声を掛けられた。

「春奈さん、書類落としてたの、大丈夫だった?」

知ってたんだ…恥ずかしい。

そのとき、私のお腹が鳴り視線を逸らすと、和田さんは声を出して笑った。

「これから、夕食食べません?」

ズルい…職場のときよりも破壊力のある笑顔で誘われ、断る理由なんてなかった。

私が行きたかったレストランの予約を取ってくれた。

和田さんは、大学生のときバイトで貯めたお金で外国に行き、色んな国に友達がいることを知った。

「俺、もうすぐ仕事を辞めて海外に行くんだ。人生一度きりだもん。春奈さんの料理美味いって聞いたよ?店出せばいいのに」

「和田さんって仕事してるときと、なんか全然違いますよね?」

「悪い意味じゃないよね?俺、不器用なの。仕事のときは集中したいから」

レストランに入り、私が食べたかった料理を和田さんも注文した。

「あ、今の料理、安く同じ味を再現してる人がいるの知ってる?」

和田さんは微笑んでいった。

「知りません、教えて下さい!」

「送ったよ」

私のスマホが震えた。

「ごめん。トイレ行ってくる」

和田さんは席を立ち、私はスマホを取ってワクワクしながらメッセージを見た。

「何?これ…」

それは、どこかのビルで、男の人が椅子に座っている女性の下半身に顔を埋めている動画だった。

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