まだよく知らない飲み友達の彼を好きになりかけている私

・作

仕事の帰り、いつものお店でお酒を飲む私。いつのまにか親しくなった彼。ご近所だからと一緒に歩いて帰るようになった。お互い酔っているとはいえ、いきなりキスがしたいと言われたり、家で飲みなおそうと誘われたり。そんな彼に惹かれて…

お昼15時。
私は最近いつもこの【田舎庵】という蕎麦屋で朝ごはんを食べる。
ざる蕎麦と小さな天丼のセットがお気に入りなのだ。

私は夜働いていて、だいたい朝5時に終わる。
そのあと必ずちょっとお酒を飲むので、寝るのは朝8時くらいかな。
起きるのはだいたいお昼を過ぎてから。

お酒を外で飲むときは、朝までやってる店か、深夜から営業が始まる店、そういう夜の仕事の人のための飲み屋に行っている。時間が時間だけに、そんなにお店が開いていないのだ。

彼に会ったのはいつも行っているお店だった。顔見知りだったけどいつの日か友達になり、彼と私の家は驚くほど近所だったので一緒に帰っていた。

あの日はとても酔っていてからだと思うけど、

「キスしたいなあ」

そういって彼は突然私のくちびるにちゅっとしてきたので、驚いて動けなかった。
お互いとうに30を超えていて、お互いバツイチのふたり。
それで道端でキスなんか。

「びっくりしたー!もう」
そう言って何でもない顔をしてみせた。

だけどその日から、彼に会ってない時もよく彼のことを考えるようになり、彼から毎日メッセージがくるようになった。

おはよう

今日も頑張ろう

お疲れ様

仕事終わった?

おやすみ

その日、いつものお店に行くとカウンターに彼がいてお酒を飲んでいた。
だいたい仕事が私よりはやく終わるらしい。
隣に座って話しかける。

「おつかれ」 
「おつかれさま」

お酒を飲んで、他愛のない話をして、また一緒に帰っていたら、気のせいか彼の歩くペースがいつもより遅くなった。

「もう一杯うちで飲もう」
「いいね」

なんだかそれが自然な流れに思えて、普通に答えていた。
コンビニに寄って350mlのビールと酎ハイを2本ずつ買う。

いつもは彼のマンションの前で別れていて、私の家はちょっと先だけどそこまでは送ってくれたことはない。
じゃあねと言って、彼がオートロックを開けるところを見送って、ひとりで数メートル歩いて帰っていた。いつもと違う展開に胸が高鳴る。

*****

「ちょっとトイレ、ゆっくりしてて」
玄関を開けてくれたらすぐにお手洗いへ入っていった。

「お邪魔しまーす」

彼の部屋はワンルームで、間接照明がセンス良く置いてある。

綺麗に片付けられていて、アロマオイルの香りが漂っていた。
トイレから出てきた彼が、間接照明を調整してくれる。

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