感じちゃダメなカレは、甘い毒 (Page 5)

「ユリ」

「やだ、や…」

「ユリ、落ち着いて」

「いやぁ…」

「…大丈夫、開けてないよ」

「…？」

見ると、純也の言う通り、ドアは閉じられたままだった。

「ドアノブを押しただけ。ごめんね、驚かせちゃった」

私を後ろから抱きすくめ、耳元にちゅっとキスを落とす。

「ぁん、ん…」

私の中からずるりと抜けていく感触。出ていく間際、私のか彼のかも分からない熱を狭間で感じた。

「すごいね、俺イってないのに、こんなにナカからあふれてくる。…全部ユリのだよ」

かあっと顔が真っ赤になった気がして体を縮こまらせた。

「見られるかもしれないって、興奮したんだ。ユリの体」

「っ」

「ドアノブ下げた途端にすごい反応してたよ。柔らかいのに、俺の全部締めつけてきてさ。奥からもめちゃくちゃあふれてきた」

嬉しそうに純也が耳元で囁く。吐息でくすぐってからかうように。

恥ずかしくてたまらないのに、純也が出て行ったばかりの場所がまた、じゅんっ、て…。

うずいて気持ちよくなってしまうのが分かった。

「ユリ、聞いたんだね、あの噂」

「…」

「うちに出向で来てた、社長の友人の娘さんに俺が気に入られたって噂、聞いたんでしょ？」

目を閉じて俯いた私を純也が向き直らせる。それでも、目の前のネクタイから目を背けた。

「…って」

「え？何、ユリ」

「お見合いした、って…」

「…」

「そう、聞いたから」

自分で自分を抱きしめる。はだけられたままの胸がみっともない。

この人、もう私の恋人じゃなくなるのに…。

こんな姿を晒して気持ちよくなってしまう自分の体の浅ましさに、消えてなくなりたかった。

「違うよ」

「え？」

顔を上げた。微笑む純也が私を優しく見下ろしていた。

「あの人、俺の兄貴の同級生だったんだって」

「…」

「ずっと兄貴のこと好きだったんだけど、そっくりな俺を見かけてびっくりして、声をかけたんだって」

「え…？それじゃ、」

「そう。お見合いしたのは俺の兄貴。俺じゃないよ。破談になるかもしれないから内緒にして欲しいって言われてたんだ。昨日、無事に結納することになったけどね」

呆然と純也を見つめる。

「ユリ、俺と別れたい？」

頬を撫でられて、ブワッと涙が込み上げてきた。

「ユリ？」

無理に飲み込んだせいで痛かった喉にも込み上げてくる。

「言って」

ずっと我慢していた言葉が。

「別れたくないっ、好きよ、純也！」

Fin.