喪服の戯れ、義弟の罠

・作

義父の葬儀を終えた後、里香の寝室に義弟・有二が入ってきた。有二とは結婚前に肉体関係があり、夫はそれを知らない。ズルズルと禁断の関係を続けてしまう里香。しかし今日の有二は、いつになく狡猾(こうかつ)だった…。

喪服のファスナーを下ろしたとき、寝室のドアが開いた。

「誰?」

「ワンピースもいいけど、僕は着物の方が好みだな」

黒いネクタイを緩めながら、義弟の有二が入ってきた。

「まだ帰ってなかったの?」

「ひどい言いようだなぁ。ここは俺の実家でもあるんだぜ?」

有二はネクタイを床に落とすと、私に近づいてきた。

長身の体が、夕暮れの寝室に長い影を落とす。

「兄さんは?」

「叔母さんを送りに行ったわ」

「そういえば、兄さんのダサい車見当たらなかったな…」

有二が私の首筋に触れた。

「いつかの法事で、義姉さん着物だったよね。あれ似合ってたのに」

「あんなの暑くて着られないわ。私、薄物持ってないのよ」

「そっかぁ。親父も冬に死んでくれたらよかったのに」

有二はいやらしい笑みを浮かべると、下ろしかけのファスナーに手をかけた。

「やめなさいよ…不謹慎だわ」

「義姉さんだって少しは期待してただろ?葬儀の間も物欲しそうに俺を見てたじゃないか」

「そんなことっ…んんッ」

私の唇に、有二が貪るようなキスをした。

すぅっとファスナーが下され、ワンピースと肌の間に有二の手が滑り込む。

思わずビクッと体が跳ねた。

「相変わらず、背中弱いね」

愉快げに有二がささやく。

節張った長い指が、私の腰へ下りていった。

「んっ…だめよ…あの人が帰ってくるわ」

「1時間は帰ってこないさ。それとも、1時間じゃ足りない?」

有二はクスッと笑うと、私からワンピースを剥ぎ取った。

「下着とパンストは脱がさないよ。その方が興奮する…」

そう言って、私をベッドに押し倒す。

壁に掛けた結婚式の写真が、冷ややかに私を見下ろしていた。

*****

阿久津有二と出会ったのは、私が結婚する前だった。

よく同じクラブに出入りしていて、年齢も近かった。

当時の私は顔だけで男を選ぶような浅はかな女で、自分の若さを消費しながら、同時にいくつもの短い恋愛を楽しんでいた。

その中でも、有二は特別な存在だった。

スラっとしたモデル体型で、クラブでも評判の色男だった。

鋭くて冷たい猫のような瞳に見下ろされると、思わず体がゾクっとする。

有二に誘われると私はいつでも尻尾を振って、車でもクラブのトイレでも淫靡なメスになった。

多分、恋ではなかったと思う。

その証拠に、有二が姿を消した後、私はまた同じように別の人と短い恋愛を繰り返した。

年を追うごとに交際期間も長くなり、クラブにも行かなくなった。

2年前に今の夫と知り合い、私は結婚した。

有二が夫の実弟だとは、夢にも思わなかった。

再会してからというもの、有二は帰省のたびに私を求める。

相変わらず、体の相性は抜群によかった。

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