誕生日前日。初めて彼と繋がる日……のはずが指だけで何度もイカされることになるなんて!
中学生の頃に聞いた変な伝説は嘘だと証明するために、彼は私を裸にして観察すると言った。けれど、ただ見ているだけで終わるはずがなく……。初めての経験がこんな始まりで、さんざん指でイカされ続けることに。本番前にもう限界です!
由香が中学生だった頃の部活の先輩が言った。
『三十歳になってもバージンだった女は、ヤマンバになる』
真面目な顔で言った先輩に、由香はもちろん周りのみんなも笑った。
恋人の優が住むマンションのリビングでくつろいでいた由香が、ふと言った。
「笑わないで聞いてほしいんだけど」
「なに?」
「中学の時の部活で先輩が言ったんだけどね……」
ヤマンバのことを話すと、優は盛大に噴き出した。
「ヤマンバって!」
「笑わないでって言ったでしょ!」
「アハハッ、無理だよ。まさか、本気で信じてるの?」
「そんなわけないでしょ。ただ……ちょっと、思い出しただけ」
この話を、今思い出してしまった理由には、心当たりがある。
彼女は明日、誕生日を迎えて三十歳になる。
そして、今夜何もなければ、バージンのままだ。
初体験がまだであることを、優は知らない。
優と付き合う前にも何人かの男性と付き合ってきたが、最後までしたことはなかった。
「ねえ、もしかして」
由香は優に顔を覗き込まれた。
「由香って……」
「わああっ!何でもない!忘れて!」
「そっか……そうだったんだ。由香は綺麗だから、もうやってて当然だと思ってた」
「ど、どうせ顔だけの女よっ」
由香は、街を歩けば十中八九の男性が振り向くほどの美人だ。
大学生の頃、由香と一緒にクラブに行くと金持ちのイケメンが寄ってくるからと、たいして親しくもない知り合いに誘われて、夜の街へ遊びに出かけたことがあった。
しかし、由香自身は心底から楽しめなかった。
彼女の興味の方向は、小説、漫画、ゲームだからだ。
由香はオタクと呼ばれる種類の人で、そっち方面のイベントに行くほうがずっと楽しかった。
今まで付き合ってきた相手には隠していたのだが、関係が深くなっていけば自然と伝わってしまうもので。
由香の容姿とのギャップから笑われることもあり、それでだんだんと疎遠になり自然消滅が常だった。
その点優は、由香の趣味を知っているし理解もある。
彼自身もそうとうな鉱物オタクだからだろう。
「顔だけなんて思ってないよ」
由香は優に抱き寄せられた。
「じゃあ、試してみよう。明日になったら由香がヤマンバになってるかどうか」
「だから、信じてないってば」
「そう?俺は何だか心配になってきたよ。だから、日付が変わるまで由香の身体を観察しようと思う」
「か、観察って……」
「裸だとここじゃ寒いから、ベッドに行こう」
とても楽しそうな優に、由香は寝室に連れて行かれた。
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