秘密のセラピーはスイートルームで
有沙は恋人との淡白なセックスに悩んでいた。セックスセラピストの西条を友人に紹介されるが、どうしても恋人への罪悪感が拭えない。そんな有沙を優しくリードする西条。「挿入はなし」という約束だったが、西条のテクニックに有沙は連続イキを体験してしまい…。
「ここって…もしかしてスイートですか?」
生まれて初めてのスイートルームに有沙は目を輝かせた。
敷き詰められた上質な絨毯、天蓋付きの大きなベッド、大理石のテーブル。
都会の風景が一望できる窓の前に立つと、宝石のような夜景が有沙の目に飛び込んできた。
「きれい…」
「少しは緊張がほぐれたかな?」
低く甘い声と同時に、有沙の肩に西条の手が乗せられた。
「…はい」
「そう、よかった。決して後悔はさせないからね」
西条が有沙を後ろから優しく抱き締める。
そしてまだ少し強張っている有沙の頬に、触れるだけのキスをした。
「僕に任せて。すばらしいオーガズムを教えてあげるから」
セックスセラピストなんて肩書きを聞いたのは初めてだった。
西条悠一を友人に紹介された時、彼の写真と元医師だという情報がなければ会わなかったかもしれない。
ボランティアでセックスに不満を持つ女性を救うなんて、まるで官能小説だ。
それでも、有沙には解消したい悩みがあった。
恋人・陽介とのセックスである。
陽介とは付き合って1年になるが、有沙は彼とのセックスで一度も達したことがない。
淡白な前戯、短い挿入時間、単調なピストン運動。
有沙は毎回イッたふりをしていた。
「私…やっぱりまだ罪悪感があって…」
有沙は振り返ると、西条を見上げて言った。
スレンダーな西条は、上質なブランドのスーツ姿がよく似合っている。
切れ長の瞳と薄い唇が、西条の雰囲気をよりクールに見せている。
それでも有沙を見下ろす眼差しには、親しみやすい暖かみがあった。
「いいんだよ。それだけ彼を愛しているんだね」
西条の言葉に思わず涙があふれた。
陽介に申し訳ない気持ちはあるのに、女としてこのまま快感を知らずに生きていくことに抗う自分がいる。
それだけ有沙は陽介とのセックスを真剣に悩んでいた。
セックスが原因でふたりの関係が破綻しかねないと、心のどこかで予感していた。
「これって浮気なのでしょうか?」
「いいかい?これは浮気なんかじゃない、セラピーさ。エステやマッサージだと思えばいい。ちょっと疲れやストレスを癒すための行為だよ」
西条はかがみ込むと、小柄な有沙に視線を合わせた。
「じゃあ挿入はなし、にしようか」
有沙は目を伏せると、小さく頷いた。
勝手な線引きではあるが、貞操を守ることで陽介に対する罪悪感が少しは軽くなる気がした。
「ねぇ、泣くと心拍数が上がって血流がよくなるんだよ」
西条の声に、有沙は顔をあげた。
赤くなった自分の指先を見る。
西条は有沙の小さな手をそっと掴むと、手の甲にキスを落とした。
「ほら、もうこんなに熱い。今、キミはとっても感じやすくなってるんだ」
西条は立ち上がると、そのままベッドまで有沙の手を引いた。
「恥ずかしいだろうから、僕から脱ぐね」
西条はスーツのボタンに手をかけた。
えっろ...
西条さん…現実世界に…はよ…!
匿名 さん 2020年10月17日